横山秀夫【深追い】
横山 秀夫 著
税込価格:885円
出版:実業之日本社
ISBN:978-4-408-50447-6
発行年月:2005.2
利用対象:一般
地方の警察署を舞台に組織に生きる人間の葛藤を描く警察小説集。
その舞台とは、三ツ鐘署という。周りの警察署からは「三ツ鐘村」と呼ばれ、赴任したくない署になっている。
その小さな「村」で起こる出来事で、どの短編も何だかやるせなくなってくる。
表題作の【深追い】
交通事故の犠牲者の妻は、元同級生の明子だった。交通課の秋葉は夫の死後もポケベルに夕食の献立を打ち続ける明子と接近しようとする。
だが明子の真意は……。
【引き継ぎ】は、県下各署が窃盗犯罪の検挙件数を競う年に一度のコンクール月間に、まだ一人も捕まえていない尾花が主人公。
彼は、刑務所出所後もおそらくは犯行を重ねているだろう岩田を追っている。件数が多いから、彼ひとりを捕まえれば点数が稼げるのだ。
同じ課の有坂もまた、岩田を追っている。
なぜ同じ仕事なのに、協力できないのか。というのは、素人の感想なのか?
土壇場で、父の同僚だった専門官に一種の裏切りに合う。
【又聞き】
小学生だった三枝は、海でおぼれかけたのを大学生に助けられた。しかしその大学生小西は、おぼれてなくなってしまった。
毎年小西の命日には、彼の実家を訪れることになっているのが苦痛でたまらない三枝。
だが、赴任して初めてのこの年。小西には発見があった。
今は鑑識係になっている小西は、毎日写真と向き合っている。これがポイントになって、22年前の事故の真相に近づく。
一旦小西宅を離れた三枝だったが……。最後の1行が効いている。
【訳あり】
律儀に定年まで交番勤めをした巡査。まだ学生の子どもがいるので、何とか再就職したい。
警察学校のテストに何度も落ちて、それでも警備員をしながらお巡りさんもどきを貫いている男。
一方、将来を約束されて地方へやってきた超エリートの幹部候補生。
警備員をしている上記お巡りさんもどきの彼が、謎解きのキーパーソンになる。キーワードは「警電」。
これが一番よかったかな。
どこの役所にも、似たような話はあるのかもしれない。
深追い
Kindle Unlimitedにて
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