中山智幸【暗号のポラリス】
中山 智幸 著
税込価格: 1,728円
出版 : NHK出版
ISBN : 978-4-14-005673-8
発行年月 : 2015/11/14
利用対象 : 一般
両親を亡くし、兄と2人で暮らしている難読症の小学生、結望。ひらがなの文章さえすらすらと読めない結望は、とある「道具」を手に入れ、文字と言葉を自分の力に変えていき…。NHK出版WEBマガジン連載に加筆し書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
ユノは、兄と二人暮らしらしい。両親は亡くなっているのだが、それがいつ頃で何故亡くなったのかは、なかなか出てこない。
突然登場する兄の恋人だと称す真理子が来てからも、その現在と過去を行き来しつつ物語は進むのだが、両親は普通にその過去の場面に登場してくる。
ユノが難読症だと知ってからの、家族のそれぞれの対応。特に母である の指導やしつけは、現在のユノに染みこんでいる。
その母があちこちに描いた「ひらがなの「の」にツノを生やしたような記号」は、実は父もこっそりと行く先々で描いており、兄もそしてユノ自身も描いて廻るようになる。
旅先で出会った女子中学生に、鎌倉政府成立の年の覚え方を教わる。「いいくにつくろう 鎌倉幕府」と覚えることが多い年代を、彼女は「ひとつひとつが苦肉の策」と覚えたというのだ。
それが、というより彼女との会話が、ユノを前へ進ませる。
やったことのないことを、やってみる。
それは、九州のとある塔に登って、記号を書いてくること。
真理子は取材を兼ねてユノを伴って九州向けて出かけるが、途中ユノが女子中学生に出会ったことで、ユノは単独行動を取るようになる。
しかしGPSで把握されていたユノが降りた長崎駅には、早廻りしていた真理子が現れたのだった。
途中、母と学校との不毛なやりとりがあったり、それを明彦が受け継いで辛い思いをしたりということもある。ユノの進路についての無謀とも思えるような担任との会話。
だが結局、母を初めとする一家の「解って貰う為の努力」は、後年役に立つ。
明彦が真理子と結婚し、その子どもが学校へ行くようになる。その担任は、ユノが5・6年次に受け持って貰った会田先生だった。
ユノは会田先生が校長になっている学校へも訪ねていくようになる。
真理子との旅行中、ユノが話したとこは真理子が筆に起こし、それは活字になる。実に楽しい一種の冒険記になっている。
誰もがもっている「自分のポラリス(北極星)」を、みんなが探し出せますように!
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