内館牧子【終わった人】
内館 牧子 著
税込価格: 1,728円
出版 : 講談社
ISBN : 978-4-06-219735-9
発行年月 :2015/09/17
利用対象 : 一般
仕事一筋だった田代壮介は定年を迎えて途方に暮れた。「まだ俺は成仏していない」と職探しをするが…。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?【「TRC MARC」の商品解説】
「身につまされる」といったレビューがあったが、何とも往生際の悪い男だ。
「東大法科卒・メガバンクに就職した」がどうしても頭から離れない。
ジムで同じようなジジババたちとも打ち解けない。どこか彼らをバカにしている。
勉強なら何とかなるかと思って東大大学院を受けるためにカルチャースクールに通うも、本当にしたいことではないような気がする。
もっともそこの受付にいた女性に、同じ東北出身というのもあって接近していく。
この女の子がなかなか強かで、近づいたかと想うと距離を開け、また連絡してくる。
その内、ジムに通っていたさわやかな若者に声をかけられ、その会社で顧問として働くことになるのだが……。
こういう定年じいさんは、実に多い。
どうしてもキャリアを出したくて、次のステップで無心になれない。
主婦が日常の中で自分らしさを活かせる場所を獲得していくのとは違い、どこへ行ってもなじめないのだろう。
「ボランティアなんて自分のしてきたことに比べたら……」とか「こんなジムなどは自分のいるところではない」といった上から目線が消せないのだろう。
荘介の場合は、お嬢さま育ちの妻が技能を身につけて生き生きとしているのを容認しているだけマシかもしれないが。
7月13日付の「いすみ鉄道 社長ブログ」に
会社で働く以外に収入の道が無い人たちは労働者であり、労働者というのは決して中流ではないという言葉があった。
この言葉を、宗佑に聞かせたい。
しかし、同窓会で盛岡へ行ってからの展開は良い。
鎧を捨てて、素の自分に戻り、現状を級友に話す。
そしてその後、東京へ戻ってから身の振り方を考える。
娘道子と、妻千種のいとこトシの存在が救いになっている。
終わった人
Kindle価格:1,404円
honto価格:1,404円
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