内田康夫【化生の海】
内田 康夫 著
税込価格: 885円
出版 : 講談社
ISBN : 978-4-06-277212-9
発行年月 : 2012/03/29
利用対象 : 一般
「松前に行く」と言い残して余市を出た男が、加賀の海で死んでから5年。再度その足跡を辿ることになった浅見光彦は、男が残した土人形を手掛かりに、松前から北九州の津屋崎へ向かう。男の運命に秘められた、謎の帰着点とは?【「TRC MARC」の商品解説】
紙本があるから再読なのだが、中身はまったく覚えていない。
しかし読み進める内に、この被害者の過去が身につまされるようになる。
また、思い出したというよりも、途中で彼の過去(母親が誰か)が判ってくる。これは恐らく、初読だとしてもそうではなかろうか。
赤ん坊を捨てた当時も経済的に困っていたわけではなし、せめてもっとしっかりとあとのことを考えてくれたらよかったのに。
と、それだったら小説にならないことを考えてみたり。
話は逸れるが、本書の中で浅見が終戦後の新聞記事を探す場面がある。
過去記事を見つけるのが目的だが、同時に当時の世相をも知るという設定だ。
今月の検索語で、ひばり恋ひしがヒットしてきた。それを読んで「角兵衛獅子の歌」など懐かしく思い出していた頃だったから、まさに本書でその歌詞を観たときはあまりの偶然にビックリしたものだ。
モデルとなった女優に子どもはいなかったようだが、アメリカ帰りの振る舞いをこうはっきり書かれてしまうと、もしかしたらと思ってしまう。
それに主演映画が「愛染かつら」ときては、はっきり名指ししているようなものではないか。
この女優(田中絹代)のアメリカ帰りの奇行については、母が語っていた。自分の記憶としては、もう晩年の、例えば「楢山節考」での鬼気迫る演技などしか思い浮かばない。
本書へ戻って、殺人の動機が金がらみであったとは(いや、それに幼い頃の嫉妬が絡んではいるが)、被害者はさぞ浮かばれないだろう。
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