重松清【小学五年生】
重松 清 著
税込価格: 605円
出版 : 文藝春秋
ISBN : 978-4-16-766908-9
発行年月 : 2009/12/01
利用対象 : 一般
まだ「おとな」ではないけれど、もう「子ども」でもない。微妙な時期の小学五年生の少年たちの涙と微笑みを、移りゆく美しい四季を背景に描く、十七篇のショートストーリー。【「BOOK」データベースの商品解説】
一つ一つが大変短いので、あっという間に読めてしまう。
しかし、中身はそれぞれに重たいこともある。
【おとうと】
おとうとのアッ君は、明日目の手術のために入院する。うまくいけばいいけれど、「もしも」があったらと思うと、兄の小学五年生は気が気でない。
そのアッくんを自転車に乗せて、海の見えるところまで連れていった。「もしも」見えたら、悪い方の「もしも」はなくなるかもしれない。
4つも年が違うのと、目が悪くて素早い動作が出来ない弟への愛情を、不器用に表現して好感が持てる。
【バスに乗って】
入院している母を見舞いに、少年はほぼ毎日「バスに乗って」病院へ通う。
入院は長引いている。
当初切符を買っていたのが回数券を使うようになり、少年の不安が高まっていく。その回数券の最後の一枚を使いたくない気持ちを、バスの運転手は解ってくれたのだろう。あくまで業務上の態度しか取らないが、少年には何よりの励ましになっていたのでは。
【川湯にて】
父の浮気が元で離婚した母と、母の元に残った少年。
川湯を堀る母のやるせない気持ちを、少年は大きくなっても覚えているだろう。
【タオル】
漁師だった祖父の葬式で、取り残されたように感じている孫の少年もよかった。
祖父が毎日使っていたタオルを額にギュッと巻き付けると、潮のにおいが残っていた。いつか一緒に彼を連れて海に出たかっただろう祖父。
収録作は
・葉桜
・おとうと
・友だちの友だち
・カンダさん
・雨やどり
・もこちん
・南小、フォーエバー
・プラネタリウム
・ケンタのたそがれ
・バスに乗って
・ライギョ
・すねぽんさん
・川湯にて
・おこた
・正
・どきどき
・タオル
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