石持淺海【わたしたちが少女と呼ばれていた頃】
石持 淺海 著
税込価格: 648円
出版 : 祥伝社
ISBN :978-4-396-34186-2
発行年月 : 2016/03/11
利用対象 : 一般
新学期、横浜にある女子高の特進クラスで上杉小春は碓氷優佳という美少女に出会う。おしゃべりな小春とクールな優佳はやがて親友になり…。
初めての作家。
この優佳が、やがて名探偵になるらしい。
シリーズで出ているようなので、少しずつ読んでいこう。
本書は、彼女たちの高校3年間を、それぞれ春と冬の短篇としてオムニバスのように繋いでいく。
通っている高校は、碩徳高校という女子校。校則が厳しい進学校だ。また、お嬢さん高校でもある。
1 赤信号
高校1年生の新学期
中高一貫校の碩徳横浜女子高校に、中学から上がってきた、上杉小春。一方その席の後ろには、一般入試で入ってきた碓氷優佳がいた。
二人は同じ鉄道で通っている関係で、登校時には駅で出会ってそのまま学校へ向かう。
この高校には学校近くの赤信号が点滅している時に渡り終えないと、大学入試で不合格になるという言い伝えがあった。
その言い伝えをなくすために、優佳が取った方法とは……。正直、これは後味が悪かった。
2 夏休み
ここからは、級友が一人(乃至二人)ずつ登場してくる。今回は、ショージこと東海林奈美絵。
理数系は得意だが文系は苦手なショージは、赤点を取って夏休みを予備校で過ごした。
苦手な教科で苦しんだはずなのに、彼女は満面の笑みで新学期に登校してきた。
この高校は、男女交際が禁止されている。
ボーイフレンドが出来たわけではないらしい。
予備校での勉強の甲斐あって、ショージは二学期には大きく成績を上げる。
二学期には、文化祭がある。招待されるのは、家族や教育関係者のみ。
それなのに張り切っているショージをみた優佳は、彼女の好成績と機嫌のいいわけの謎を解く。
そして、その後の展開をも。
3 彼女の朝
次は学級委員長の、ひなさまこと岬ひなの登場。
彼女はお酒が好きで、ときどき二日酔いで学校へ来る。だが真相は……。
ちょっと無理のある展開。
4 握られた手
二年生の秋は、いつも手を握り合っている二人の巻。
級友たちから「百合」ではと思われている、「ひらひら」と「大学」の二人。
しかし彼女たちの仲良しぶりの理由を、優佳は見破った。
ここ2・3年の社会情勢から見れば「おや?」と思うような表現(登場人物のセリフ)もある。
しかし「百合」は、吉屋信子の小説にもよく出てくる。当時は言葉は違ったが。
細かいことだが、「立ち振る舞い」という使い方が気になった。元々の「立ち振る舞い」ではなく、「立ち居振る舞い」として使われていた。
5 漫画家志望の、カッキーこと柿本千早。
家が開業医で、医学部に進学することが求められている。彼女が選んだ進学先は……。
ひなさまの進言で、志望校を変えたカッキー。だが、真実は。
それらを、クールな目で眺めていたのが、優佳だった。
小春はふと、その優佳の対応に不審を抱く。
6 災い転じて
東大志望のサッサが主役。このサッサという子はこれまでにも何度も登場しているのだが、本名はなんだったっけ?
それはともかく、毎年彼女のお父さんが同級生たちに「初日の出」を見せに連れて行ってくれる。
高校三年の冬は、それが初詣になった。
その初詣で、サッサは利き腕である右手を骨折してしまう。
センター試験まで10日あまりしかない。
今回も又、優佳の魔法の一言が効いて、サッサは無事合格する。
そして、彼女たちは卒業していく。
以下、ネタバレ(?)あり。
最後になって、小春は優佳の心が冷たいことに気づく。いや、うすうす気づいていたのだが、それを認めたくなくてごまかしていたのかもしれない。
しかし大学は別々になるし、小春は優佳と距離を置くことを選択する。
だが、このあとの優佳の活躍ぶりも小春がワトソン役を務めるようだし、どういう展開を見せるのだろう。
著者は女性だと思い込んでいたが、男性だった。そう知れば、文体など納得出来る点もある。
わたしたちが少女と呼ばれていた頃
Kindle版価格:600円
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