鮎川哲也【黒いトランク】
鮎川 哲也 著
税込価格: 821円
出版 : 東京創元社
ISBN : 4-488-40303-4
発行年月 : 2002.1
利用対象 : 一般
千九百四十九年も押し詰った鬱陶しい日の午後、汐留駅前交番の電話のベルが鳴り、事件の幕が切って落とされた。
汐留駅に着いた荷物から、異臭がする。
中には、腐乱した屍体が入っていた。被害者は、馬場版太郎。
荷物を送ったのは、近松千鶴夫。
しかし近松は、逃げも隠れもせず、旅先から妻にハガキを送ったりしている。
その近松が、水死体で上がった。
状況から自殺と判断した警察は、事件は一件落着と踏んだのだが……。
この間、当時(昭和24年)の鉄道事情など判って、興味深い。
また、著者による言葉の説明なども親切だ。
さて、終わった事件のはずなのに、ここで鬼貫警部登場。
実は自殺した加害者近松は鬼貫の学生時代の友人で、一人の女性を争った仲だった。
その未亡人に請われてはるばる九州までやってきた鬼貫は、真相を探るべく再度調べ直す。
で、ここからが実に面白かった。
出てくる関係者が全部、鬼貫の学生時代の同期なのだ。
また、彼らの名前がふるっている。
被害者が馬場版太郎で、最初の容疑者が近松千鶴夫。
以下、蟻川愛吉・膳所善造。近松と謎の人物を運んだトラック運転手が、彦根半六。
他にも、楠山薫.。更には、加藤数馬という鉄道公安官や吉田与五郎という掏摸も。
と、姓名の頭が同じアルファベットになる。このことに特に意味はないようだが、遊び心だろうか。
最後は、鉄壁のアリバイを崩していく鬼貫と犯人との頭脳戦になる。
時刻表トリックも出てくるが、今回は人間模様の描写が多かった。
動機が、ちと弱いかな。
黒いトランク
Kindle版価格:648円
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