道尾秀介【風神の手】
道尾 秀介 著
税込価格: 1.836円
出版 : 朝日新聞出版
ISBN : 978-4-02-251514-8
発行年月 : 2018/01/04
利用対象 : 一般
彼/彼女らの人生は重なり、つながる…。章を追うごとに出来事の〈意味〉が反転しながら結ばれていく。数十年にわたる歳月を、ミステリーに結晶化した長編小説。【「TRC MARC」の商品解説】より
一つずつ独立してもいる、四章からなる物語。
第一章【心中花】
歩美の母は、余命いくばくもない。
その母が遺影を撮影したいというのに付き添った写真館で見た写真が、母の昔を思い出させる。
そこから奈津実(母)の高校時代の話になる。
父が関係した事件で町を出ることになった奈津実は、ちょうどその頃出会った鮎を釣る青年、崎村と親しくなり……。
歩美と行った写真館で狼狽した母奈津実は、崎村が生きていたことを知ったからだった。
ちょっとした嘘が重なって、少女と青年の運命を変えてしまった。
次の【口笛鳥】は、その写真館「鏡影館」から始まる。
経営者の友だちだった人物(僕)が訪ねてきて、経営者の妻と会話をする。
その間、遺影が飾られている棚を覗き、二人の少年の写真を見つける。
次からは、少年二人の物語。
ここでも「嘘」が取り上げられている。だが、「遺影の間にあった二人の少年の写真」を思い出すと、この二人のことなのかと、読んでいる内に辛くなった。
道尾さんらしいオチがあるのだが。
【無情風】は、再び現代。
看護師になった歩美と、崎村の息子高校生の源哉が知り合う。
歩美は母と一緒に崎村の家を訪ねているし、源哉との因縁(?)も知っているが、彼には話していない。
エピローグとしてある【待宵月】では、物語は一気に収束に向かう。
かつて歩美たちが町を出て行かざるをえなかった事故(事件)で仕事が回ってきた野方建設の野方逸子は、歩美の病院に入院している。
その逸子の回想で、取手川の事故の真相が語られていく。
逸子に話を持ちかけた人物も、歩美と源哉が突き止め、色々なことがつながっていることが判る。
いつもながら、この終わり方はうまいなぁと思う。
著者は小説を書くとき、プロットを全部組み立ててから取りかかるという。
読者は今度は、その細部を記録しながら読むと、登場人物の関係性などが次第に明らかになっていって、ジグソーパズルをしているように一つ一つのパーツを埋めていくことが出来る。
時には、違った場所にはめてしまって(ミスリードされて)、どうにもうまく埋まらないこともあるが、それすらも愉しい。
風神の手
Kindle版価格:1,404円
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