近藤史恵【昨日の海と彼女の記憶】
近藤 史恵 著
税込価格: 842円
出版 : PHP研究所
ISBN : 978-4-569-76846-5
発行年月 : 2018/07/11
利用対象 : 一般
25年前、カメラマンの祖父とモデルを務めた祖母が心中した。高校生の光介がそこに感じた違和感とは。切なくてさわやかなミステリー。【商品解説】
海に近い田舎町に住む光介の、高校生になった初めての夏休み。光介はぼんやりと、大学生になったら地元を出て行くだろうと思っている。
そこへ、母 夢の姉芹とその娘双葉が、突然引っ越してくる。芹は、シングルマザーである。
光介の祖父母は、25年前に海に入水して亡くなっている。
しかも、それは片方が仕掛けた無理心中だという話もあって、やや複雑な様相を醸し出している。
その思い出を葬りたい母と、真相をつかみたい芹。
芹がきてから、光介のまわりでなにかがかわりはじめている。芹は否応なく、この家に風穴を開け、空気を入れ換えた。
写真店を経営しながらカメラマンでもあった祖父の写真を見た光介は、写真に興味を持ち始める。
芹は写真店を再開しようとし、その関係で光介も昔の祖父の関係者と出会うことになる。
最初は青春小説で、光介の成長物語かと思っていた。
しかし祖父母の謎を追究しはじめた頃から、ミステリーになってきた。
謎が多い。
母はただ忘れたいだけでなく、何かを持っている。高校の同級生だった父は、その母を支えている。
真相に近づくにつれ、光介は気づいたことを話すばかりがいいことではないと悟る。
正しいということが、なんの力も持たないときだってあるのだ。
そして本文は、次の言葉で締めくくられる。
大人になるということは、小さくない秘密を抱えることなのかもしれない。
エピローグで、光介は写真を撮るようになった。
この子は、父母の愛情でまっすぐに育っている。
多少気弱なところはあるが、母の強さに触れて影響を受ける。
屈折した心を抱えた双葉も、ここで育っていく限り大丈夫だろう。
原題は、【昨日の海】だった。
文庫化にあたり、【昨日の海と彼女の記憶】と改題された。
「彼女」は、本当は誰のことなのだろう?
昨日の海と彼女の記憶
Kindle版価格:730円
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