荻原浩【それでも空は青い】
荻原 浩 著
税込価格: 1,365円
出版 : PHP研究所
ISBN : 978-4-569-70039-7
発行年月 : 2008.9
利用対象 : 一般
バーテンダーの僕は、骨折で入院した先の看護師の彼女に恋をした。退院後、何度かバーを訪ねてくれたものの、バツイチ7歳年上の彼女との距離はなかなか縮まらない。なぜなら彼女は“牛男”と暮らしているようで……(「僕と彼女と牛男のレシピ」)。
著者のこれまで読んだ作品とは、傾向が違って戸惑った。
いや、こちらが普通なのかな?
【スピードキング】と、次の【妖精たちの時間】は、かなり切なかった。
【スピードキング】
タイトルから想像できる、大きな話ではない。
語り手が、現在と高校時代を行きつ戻りつ、話を進めていく。
高校時代まで野球をしていた語り手にとって、突然現れた藤島は、憧れの対象だった。
彼の友だちだということが、自分自身の誇りでもあった。
今の自分は、離婚して子どもとも離れて暮らしている。
そこへ飛び込んできた、大リーグへ行った藤島の突然の死は、信じられなかった。
ここから、過去の回想と現在との交互の話になるのだが……。
最後のオチは、必要だったろうか?男の子でも女の子でも、どちらでもいいのに。
次の【妖精たちの時間】も、似たような話。
高校卒業10年後の同窓会の頃は、商社勤めで羽振りもよく結婚間近だった、
現在は、その10年後。
また来た同窓会に、行くかどうか。いや、行かない方に決めかけている。
そこへ、当時の同級生女子が来るらしいと言う話を聞く。途端に出席を決める。
それからは、高校時代の回想に入っていく。
その女子高生とは、帰国子女で男子全員のあこがれだった。美人で、当然英語が出来て。
対して、女子からは敬遠されていた。
少し遅れてきた彼女を観ながらも、なかなか話が出来ない。
しかし二次会に行き損ねた語り手が出会った彼女は、思いがけない話を聞かせてくれた。
妖精が見えるって、いいよね。
【あなたによく似た機械】
近未来の話。
この手のロボットの話は、星新一氏のもの以外は嫌いだ。(星新一ものも好きというわけではないが)
いつぞや読んだ東野圭吾のロボットも、恐ろしかった。
【僕と彼女と牛男のレシピ】
これはいい話だった。
彼女は年上で、牛男と暮らしている。それが、僕と彼女とを近づけさせてくれない原因だ。
牛男とは、「うしおとこ」と読むと思っていた。彼女の子どもの名前だった。
しかも「牛男」と書くのではなく、「潮」なのだった。
しかし最後まで「牛男」君といかになじんで行くかという話になって、涙ぐましいような努力をする。
三人で幸せになればいいな。
ここに出てくるカクテルが、美味しそうだ。
【君を守るために、】
これもイマイチ。
自殺して幽霊になって出てくる元同級生の死の原因が、悲惨すぎる。
【ダブルトラブルギャンブル】は、双子をあつかった話。
何もかも一緒なので、色々あって双子を止めるための賭けをしても、結果は一緒になってしまう。
しかし、これだけ何もかも一緒なのに、得意科目が違うというのは、ちと無理がないかな?
最終話の【人生はパイナップル】という書き下ろしが、一番よかった。
【それでも空は青い】という全体のタイトルも、これのためにあるような。
祖父と孫の、野球を通した、まさにパイナップルのような甘酸っぱい思い出。
それでも空は青い Kindle版価格:1500円
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