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2019.08.26

泡坂妻夫【亜愛一郎の狼狽】

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泡坂妻夫【亜愛一郎の狼狽】
価格:518円
カテゴリ:一般
発行年月:1985.3
出版社: 角川書店
レーベル: 角川文庫
サイズ:15cm/411p
利用対象:一般
ISBN:978-4-04-146104-4

雲や虫など奇妙な写真を専門に撮影する青年カメラマン亜愛一郎は、長身で端麗な顔立ちにもかかわらず、運動神経はまるでなく、グズでドジなブラウン神父型のキャラクターである。【本の内容】

カメラマン探偵という設定。
普段はドジなのだが、一旦事件に遭遇すると非常な才能を発揮する。

 

デビュー作だという冒頭の【DL2号機事件】。

亜愛一郎、初見参である。
爆破予告のされた飛行機と、事件に備える警察。
その近くで雲を撮影しながら、関係者の行動から次に起きることを予測する亜愛一郎。

→ のようなしょぼくれた風貌からは想像できないような敏捷さを発揮する。

【右腕山上空】は、熱風船という密室もの。犯人がいかにしてその密室へ忍び込んだのかが鍵になる。
今回も、かすかな臭いを手がかりに亜がヒントを与える

関係者や警察官たちが、なんだか判で押したような滑稽な人物たちなのがおかしい。
が、慣れるのにちょっとかかるかな。

 

【曲った部屋】は、元沼地に建てられた集合住宅が舞台。
まっさらな団地に、次々と不気味な出来事が起こり……。

その中に登場した、亜愛一郎。

団地は間取りが向かいの家と左右対称になる。
住んでいる人は、毎日の修正がつい出てしまう。

部屋が曲がっていて、家具を置くときに工夫が要ったことで真相がつかめたというのが面白い。

 

【掌上の黄金仮面】
ここで登場した刑事だったかな?が、「黄金仮面」が江戸川乱歩作であることを知らなかったのが新鮮だった。

 

【G線上の鼬】
これ、面白かったな。
犯人扱いされたタクシー運転手の同業者が、コツコツとお金を貯めて昔の恋人に会いにパリへ行く夢を持っている話。本筋とは全く関係ないのだが、早く願いが叶いますように。

 

【掘出された童話】では、珍しく亜が中心になって話が進む。
暗号解読という設定だが、ちょっと無理があるかな?

 

【ホロボの神】は、遺骨収集でホロボ島へ向かう船に、古い恐竜(?)の骨を調査に行く一団が乗り合わせ、その中に亜もいるという設定。
戦争中の出来事を聞いただけで、亜は謎を解く。

語り手は、恐らく酋長になっているだろう当時の少年と再会できたかな?聡明そうな少年だったが。
人は、自分たちが育った環境と違う習慣等に出会ったとき、お互いを理解することが大切だなと思わされた。

【黒い霧】
ここで言う「カーボン」とは、煤のことかな?
それが大量に撒かれた街。すべてが真っ黒になるので、ケーキや豆腐は売り物にならない。料理屋の畳は、総入れ替えの必要がある。
偶然居合わせて被害を受けた亜が、謎を解く。

冒頭の、筐子が見た夜明けの風景がよかった。
これと、筐子のその夜の体験が結びついて、事件解決に向かう。

 

扱っているのは皆結構きわどいが、楽しい一冊だった。
亜の描写については、非常にイケメンであるようだ。右上の画像ではそんな気がしないけれど。

↑の画像は、創元推理文庫のもの。

 

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