米澤穂信【真実の10メートル手前】
著者:米澤穂信
価格:748円
カテゴリ:一般
発売日:2018/03/21
出版社: 東京創元社
レーベル: 創元推理文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-488-45109-7
滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執−。己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するフリージャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。「名を刻む死」「綱渡りの成功例」など、粒揃いの6編を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
表題作【真実の10メートル手前】は、起業した兄妹の会社が倒産した話。そして二人とも行方不明に。その一人真理の妹から依頼されて、太刀洗万智は彼女を探しに行く。インタビューしたいという取材目的でもあったが。
こんな最後って!
何も解決していないのでは。「真実」は何?読者は、「10メートル手前」で折り返さざるを得ないのか?
【正義漢】という名の嫌らしい人物と、彼をおびき寄せた大刀洗。この項冒頭の記述は、読んでいて気持ちが悪くなった。
しかし、はた迷惑な人間というのはどこにでもいるもので、その人物が奇禍に遭ったとて、喜ぶというのは人としてどうだろうか?
【恋累心中】
理不尽なことをされた女子高生と、その恋人の心中ではあったが。
その死の現場は、少々不自然なところがあった。
雑誌記者の目から見た、大刀洗。
キビキビと、真実に近づいていく。
【名を刻む死】
ここまでは関係者の一人称で進んできたが、本編は三人称だ。
近所にかなり迷惑を掛けていた老人の孤独な死。その死の発見者である中学生と、御手洗の対決?
老人の「ひととなり」を知るために、老人の息子 を取材する御手洗に同行する。
この中学生は、あることで悩んでいた。
老人の息子が父親を罵倒するのを聞き、自分が将来そうなるのではと恐れ始める。
だが、御手洗に話すことによって救われる。
いつも冷たい印象のある御手洗だが、ある意味一人の中学生を救ったとも言える。
【ナイフを失われた思い出の中に】
今度は、仕事で日本へ来ているユーゴスラビア人の語り。
3歳の姪を殺した若いおじさんの話。
二転三転する真実を、御手洗が洗っていく。
真実は時に、非常に残酷だ。
【綱渡りの成功例】
長野県で未曾有の大雨が降り(まるで今年みたいだ)、山崩れが起きて孤立した住宅から老人夫婦を救い出す話。
地域の消防団員が語り手になっている。彼は、御手洗の後輩にあたる。
救い出された老人の話から、ちょっとした矛盾を見つけ出す御手洗。
血なまぐさい事件ではないが、老夫婦にとっては非常に大切な出来事だった。
御手洗の描写が、少々類型的な印象を受けた。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 江口恵子【普段使いの器は5つでじゅうぶん。】(2025.03.21)
- 堂場瞬一【英雄の悲鳴 ラストライン7】(2025.03.19)
- 篠田真由美【センティメンタル・ブルー】(2025.03.17)
- 【くらべて、けみして 校閲部の九重さん】(2025.03.13)
- 【Casa BRUTUS特別編集 器の教科書】(2025.03.11)
コメント