青崎有吾【早朝始発の殺風景】
著者:青崎有吾
価格:1,595円
カテゴリ:一般
発売日:2019/01/04
出版社: 集英社
利用対象:一般
ISBN:978-4-08-771174-5
始発の電車で、放課後のファミレスで、観覧車のゴンドラの中で。不器用な高校生たちの関係が、小さな謎と会話を通じて、少しずつ変わってゆき…。
思ったより楽しかった。いずれも某市の高校二校が舞台。
【早朝始発の殺風景】
殺風景というのは、景色ではなく女子高生の名前。
あるアリバイ作りのために始発列車に乗った僕(加藤木)は、一つ前の駅から乗ってきた殺風景と出会ってしまう。
彼女は連休明けから、毎日この列車に乗っているという。
電車の中で繰り広げられる、推理合戦(?)。なかなか凝った趣向だ。
次の、【メロンソーダ・ファクトリー】はよかった。
制服のリボンの色という大きな伏線があるのだが、まったく気づかなかった。
しかしこれを読むと、各学校でも上履きやリボンの色など、もう少し配慮がいるのではと思った。
【夢の国には観覧車がない】
ディズニーランドには、観覧車がないらしい。理由は、バックヤードを覗かれないためだとか。
3年生の引退行事として、クラブ全員でテーマパークに繰り出したフォークソング部だったが……。
先輩が失恋するのをさりげなく本人に気づかすという、これまた凝った趣向をこらす後輩の高校生。
【捨て猫と兄妹喧嘩】
ここでは女子高の生徒が登場。
両親が離婚して、父と母別々に引き取られた兄妹の、捨て猫を巡る騒動。
なかなか鋭い推理がある。
【三月四日、午後二時半の密室】
卒業式を欠席した煤木戸という級友に、証書とアルバムを持って訪れたクラス委員の草間。
その二人の会話を通して、謎が一つ解明され、二人は写真を撮る。
というだけの他愛ない話だが、人と人のつながりのようなものをうっすらと感じられる。
この草間に花束を贈った後輩が真田で、【メロンソーダ・ファクトリー】の語り手だ。
ここでも、見舞いのお菓子に「デルタ」のプリンが使われている。
書き下ろしの【エピローグ】では、再び加藤木と殺風景の話。春休みももう終わろうとしている時期。
どうやら二人は、【早朝始発の殺風景】での計画を実行したようだ。
そして、二人の仲は、ほんの少し近くなったようである。
高校生活の一年間。こうした時系列で進むのは、「古典部シリーズ」もそうだった。
初読みの作家さんかと思いきや、【体育館の殺人】の著者だった。
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