著者:
有栖川有栖
価格:493円
カテゴリ:一般
販売開始日:2016/01/25
出版社: KADOKAWA
レーベル: 角川文庫
ISBN:978-4-04-103806-2
大阪の町にある「天王寺七坂」を舞台に、その地の歴史とさまざまな人間模様を艶のある筆致で描く。
上町台地にある「天王寺七坂」を取り上げた短編集。
有栖川有栖がこんな作品を書くとは思わなかった。
生玉神社へは、子どもの頃よく行った。母が洋服をあつらえる店の近くだったから。
一方で、その近辺の話も大人の表情の中にはうかがえた。
谷町筋は、「四天王寺夕陽丘」駅から「谷町九丁目」駅まで、毎年通っていた。
立ち寄ってみたいところもあったが、仕事がらみでそそくさと通り過ぎるだけだった。
本書を読むと、七坂を巡りたくなる。体力的には難しそうだが。
【清水坂】
京都の清水寺から貰った名前で、ちゃんと「音羽の滝」もある清水寺。
その境内で遊んだ幼なじみが、事情があって南の方の町へ引っ越していった。
語り手を慕っていた言葉が遅い彼女は、学校でからかわれ、事故に遭った。
ちょうどその時、語り手がいた音羽の滝から、赤い山茶花が流れてきた。
かなしい話やなぁ。
【愛染坂】
「地名だけは、地震や火事にも戦災にも耐えて残るんやな。これからも大事にせなあかん」
伶人町が伶人が住んでいた町だから
こんなことを教えた相手はどんどん力をつけ、書けない作家は彼女を死に追いやる。
愛染さんは、時に残酷だ。
【源聖寺坂】
【口縄坂】
【真言坂】は、哀しい坂。いや、希望をもたらしてくれた坂。
『ぼく、行くわな』と言って、彼は去っていった。
冒頭、「I leave if you prefer.」の訳にもなるか?
【天神坂】
【源聖寺坂】でも出てきた心霊現象専門の探偵登場。
彼がとある料理屋へ連れてきたのは、迷い出ている幽霊。
幽霊が健啖ぶりを発揮して大いにしゃべって成仏するというのも面白い設定だが、結局相手は成敗されてないのでは?
思った通り、その料理屋は存在しないのだから、料理そのものも幻だったのだろうか?
ここへ来て、全体のタイトルが【幻坂】であるわけに気づいた。
出てくる坂の話は、すべて幻なのでは……?「あとがき」にはちゃんと、「怪談を書いた」とあった。
【逢坂】
またも幽霊話で正直「もういいや」と思いながら読む。
語り手の所属する劇団で演じる俊徳丸の話がメインだが、その語り手の演技を代表者にこき下ろされている。
気持ちを切り替えるため、彼は近鉄電車の「俊徳道駅」に赴く。
もう新駅で、高架になっているから、子どもの頃見た駅とは違うが。この辺で懐かしくなり、追体験する。
むかーしは、上町台地のすぐ側まで海で、俊徳あたりからも海がよく見えたのだという。
この語り手は、駅から四天王寺まで歩く。西へ行くと四天王寺やったのか。
今年はもう、去年まで行っていた谷町筋沿いの施設へは行かない。引っ越したから(いや、今年は講習会そのものがあるのかな?)。
もっとよく歩いてみたかったなぁ。
【枯野】
「芭蕉翁終焉の地」という碑が、章扉にある。
「秋深き隣は何をする人ぞ」の「隣」というのが病に伏せっていた部屋の隣室で、そこには己の影(物の怪)がいるという解釈にはビックリした。
【夕陽庵】
藤原家隆と西行。
同じ地で邂逅したこともあったのか?
この庵もまぼろし?
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