有栖川有栖【火村英生に捧げる犯罪】
著者:有栖川有栖
価格:737円
カテゴリ:一般
発売日:2011/06/10
出版社: 文藝春秋
レーベル: 文春文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-16-781601-8
「とっておきの探偵にきわめつけの謎を」。臨床犯罪学者・火村への挑戦状が予告する犯罪とは―。
近くの廃工場から人が出てくるのを見たという夫。
妻が見た時には、その人影は角を曲がるところで、「長い影」しか見えなかった。
という冒頭作【長い影】。
しかしこの「長い影」というのは、ずーーっと引きずってきた過去だった。
本書が書かれた頃はまだ殺人の時効は15年で、しかし日本の外へ出ていた期間はその分差し引かれる。
というのが、今回の犯罪の元になってしまった。
短編集だからもちろんみんな短いのだが、中に【鸚鵡返し】や【偽りのペア】といったごく短いものもある。
そして【鸚鵡返し】は、(多分)珍しくアリスではなく火村が語り手を務めている。
鸚鵡は人に言ったことを繰り返すから、誰かが言ったことを受けてそれを次のしゃべりの頭に持ってくることを「鸚鵡返し」という。
という、ちょっとシャレたのか?
【偽りのペア】では、火村の下宿のおばあちゃん登場。
火村はものにこだわらない性格のようだ。
3人写っている写真の一部を切り取って二人だけを見せるなんて芸当は、よほど上手に切り取らないと難しいだろう。
【あるいは四風荘殺人事件】は、とある高名な作家の遺筆の謎を火村が解くという趣向。
ストーリーそのものは奇抜すぎてイマイチだったが、ここで出てくる「コリオリの力」のことが面白かった。
「台風はなぜ日本を狙うのか」とも関連してくる。
地球は自転しているものね。普段はそんなこと感じない位の距離移動しかしていないということ。
表題作【火村英生に捧げる犯罪】は、おかしな出来事三つがやがてつながるという話。
大阪府警に来た脅迫状。
「火村に犯罪を捧げる」というふざけた内容だが、単にいたずらだと看過することも出来ない。ターゲットは子どもたちだから。
同じ頃、アリスは不審な電話を受ける。自分が書いたものが盗作だと息巻いている人がいるから、東京までその人に会いに来いという。
そして京都で起きた殺人事件。
アリスと火村が、脅迫状と謎の電話から感じ取った言葉遣いの共通性から、真相が暴かれる。
ごく短い短編(?)があると書いたが、それらは携帯サイトに書かれたものだった。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 【本の雑誌 3月号】(2025.03.25)
- 江口恵子【普段使いの器は5つでじゅうぶん。】(2025.03.21)
- 堂場瞬一【英雄の悲鳴 ラストライン7】(2025.03.19)
- 篠田真由美【センティメンタル・ブルー】(2025.03.17)
- 【くらべて、けみして 校閲部の九重さん】(2025.03.13)
コメント