近藤史恵【賢者はベンチで思索する】
著者:近藤史恵
価格:693円
カテゴリ:一般
発売日:2008/06/10
出版社: 文藝春秋
レーベル: 文春文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-16-771603-5
ファミレスでバイトをしているフリーターの久里子。常連にはいつも同じ窓際の席で何時間も粘る国枝という名の老人がいた。【「BOOK」データベースの商品解説】
中編三編。
【ファミレスの老人は公園で……】
七瀬久里子は、専門学校を出たものの希望する職種に就職できず、ファミレスでアルバイトをしている。
一歳下の弟信は二浪中。ゲームばかりして受験勉強をしている様子はない。
この弟は、子どもの頃悪ガキで動物をいじめたりしていた。
久里子のバイト先には、コーヒー一杯で何時間も新聞を読んでいる老人がよく来る。
彼は、公園でお茶を点てたりしている。
その七瀬家に、犬がやってきた。
それをきっかけのように、久里子は公園で件の老人(国枝)と話すようになる。
一方信は、夜明け近くによく家を出て行く。
折しも、犬を狙った事件が起き、久里子はひょっとして信の仕業ではないかと悩む。
少々ハラハラさせられるのだが、登場人物も少ないし、途中で犯人は判ってしまう。
だが、この「事件」を解決に導いたのは、国枝だった。
タイトルの「ベンチで思索する賢者」というのは、どうやら彼のことらしい。
【ありがたくない神様】
久里子がバイトをしているファミレスで、客からクレームが来るという事件が起きた。
従業員の態度が気に入らなかった客の嫌がらせだったのだが、このことで国枝の言ったことば。
「世の中にはもちろん、たくさんのルールがあって、それを守らなくてはならないが、だからといって、小さなルールを破ったくらいで、大きな罪を犯したのと同じ罰を受けるべきではないというのも、大切なルールのひとつだろうね」
昨今の世情を鑑みるに、考えさせられる言葉だ。
表題に使われている「神様」とは、この時の客が自分をそうなぞらえているのではという、これも国枝の言葉。
最後の【その人の背負ったもの】
密かに好意を抱いているバイト仲間の弓田とは、少しずつ距離が近づきつつあるのだったが。
しかし物語の方は、ここへ来て何だか不穏な展開をする。
久里子から見て国枝は、元々何だか判らない部分が多かったのが、どうも犯罪に関係しているようなのだ。
それは久里子の思い過ごしだけでなく、警察もその方向で調べ始めた。
果たして国枝は何者なのか?
うーん、モヤモヤを抱えたまま終わるのかと思ったが、犬の「トモ」がいい方向へ連れて行ってくれた。
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