
著者:湊かなえ・有栖川有栖 他
価格:660円
カテゴリ:一般
発売日:2017/07/06
出版社: 文藝春秋
レーベル: 文春文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-16-790890-4
作家の家の庭に住みついた野良猫。同じマンションの住人の猫を密かに飼う女…。現代を代表する人気作家たちが愛をこめて贈る猫の小説、全7篇を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
「猫と本を巡る旅 オールタイム猫小説傑作選」澤田瞳子
表紙絵のちょっと意地悪そうな猫の絵がかわいい。
「猫」という言葉に反応したが、著者の面々を見て「これを書いた人だ」と即判った人は少ない。
有栖川有栖さんのがあるなと思ったのも、購入動機の一つ。
しかし有栖川さんのは、以前氏の短編集で読んだものだった。
こういう本の楽しみは、知らなかった作家の別の本を読んでみたいと思うことだろう。
だが、初めての人で他作品を読みたい方はなかった。
一番最後に読んだ北村薫をもっと読みたいと思ったのが、本書の一番の収穫だった。
以下、読んだ順に。
加納朋子の【三ベンまわってニャンと鳴く】は、今時の言葉羅列のゲーマーの話であまり面白くないなぁと思いながら読み進めたが、最後の方、ネコが出てくるあたりからちょっとシンミリした。
湊かなえには食わず嫌い的なところがあるので、冒頭作からは読まなかった。
しかしこの【マロンの話】は結構よかった。
地方に住んでいても何故か小説の仕事の依頼が多い「おばやん」とその夫「ほたん」。二人の子どものター。
そんな家に、ネコがやってきた。はじめはほたんに隠して庭でネコ「マロン」を飼っていたおばやんとターだったが、仔猫を産むときにほたんが立ち会う羽目になってからは、家猫になった。
マロンの息子「ミル」が語り手を務める。
マロンは死んだがミルの物語をすると長くなるとある。マロンとミルの話を集めた本があるのかと探したが、見つからなかった。
ミルのウソつき!
「佐方貞人」シリーズの柚月裕子は【泣く猫】
「鳴く」ではなく、「泣く」。
母親に捨てられた真紀は、その母親が急死した知らせを受けて彼女が住んでいたアパートで自分だけの葬儀をする。
母親の同僚だったというホステスが悔やみに訪れる。もう一人(?)、野良猫がやってきた。
ホステスは、母親は野良猫を全部「マキ」と呼んでいたという。
やってきた「マキ」は、遺影の前で泣く。
複雑な娘の思いは、長編にもなりそうだ。
東山彰良の【黒い白猫】は舞台が中国で、登場人物たちも中国人たち。
入れ墨がテーマだからか?
猫が登場するが、あまり面白くなかった。
著者の本は、多分読んだことがない。
井上荒野は、井上光晴の娘で、どこかで父親のことを書いたものを読んだことはある。
【凶暴な気分】は、書き手茉莉子のまさに凶暴な気分のまま書き散らされた作品。
だが、妙に同意できるものがある。
北村薫が最後になってしまった。
気になる作家だが、あまり読んだことはない。
【100万回生きたねこ」は絶望の書か】佐野洋子の有名な童話が絶望の書って?
これが一番おもしろかった。
百合原ゆかりは、編集者。同じ仕事をしている藤堂との結婚式から始まる。
そこからこれまでの話になり、作家さんたちとの野球の試合後の打ち上げで、ある編集者が言った言葉。
「100万回生きたねこは絶望の書」だと。
同じようなことを、父親も言った。
本は一冊でも、読みは読んだ人の数だけある。それが本の値打ちだ。
ここに出てくる【恋愛論序説】を読みたくなったが、絶版で古書でしかなかった。
冒頭の結婚式からずいぶん違う話になっていったが、楽しかった。
著者の本は円紫さんものを一冊読んだだけだ。何故か縁がなかったというか、敬遠していたわけではないのだが。
最初に書いたように、著者の作品をもう少し読みたくなったのが、本書の一番の収穫だった。
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