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2020.11.23

原田マハ【さいはての彼女】

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【さいはての彼女】
著者:原田マハ
価格:572円
カテゴリ:一般
発売日:2013/01/25
出版社: KADOKAWA
レーベル: 角川文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-04-100642-9

敏腕若手女性社長、涼香。失恋と社内の内紛でくたくたになり、失意のまま出かけた沖縄でのヴァカンスは、行き先違いでなぜか女満別!? だが予想外の出会いが心を解きほぐしていき…。【「TRC MARC」の商品解説】

カバー絵は、「さいはて」を走る「さいはて」と「彼女」だろう。

表題作【さいはての彼女】の「さいはて」は、文字通り「さいはての土地」と、「さいはて」というバイクの名前とを掛けているのか?

「敏腕」って、どういう意味があるのだろう?

その彼女「凪」が、非常にいい感じで描かれている。
彼女こそが、本当の「敏腕」ではないか。

次の【旅行に行けなかった友人と、母親への手紙 】は、続きかと思ったらまったく別の話だった。

 

【冬空のクレーン】は、北の国の「クレーン」すなわち丹頂鶴と、大東京の空を突く「クレーン」の話。
あの建てかけのビルの一番上で働いている「クレーン」が、鶴から来ているとは、当たり前のことなのに考えたこともなかった。
そう言われれば、折り紙の鶴の形に似ている。

これも、キャリアを大切にひたすら生きてきたアラサーが、職場で挫折して北国を訪れる話。
会社の中の重要な人物だと自負していても、それは「歯車」どころか歯車を止めている「小さなネジ」の一つでしかないのだった。換えはいくらでもある。

そこに至ってもなお、やはり東京へ帰っていくのか。帰るしかないのか。
違う人生なんて、そうそう転がっているわけではないから。

 

【風を止めないで】では、再び凪が登場する。
今度は、彼女の母親の話。

凪が夏のツアーに出かけてしまったあと、一人亡くなった夫のことを想っている。
そこへ来客。
東京の広告会社の人で、凪をキャンペーンガールに使いたいという。
障害を売り物にするのではと危惧した彼女は、独断で断る。
しかし帰途、凪の勤める会社へ一緒に行って、単車の話で盛り上がる。
あげく、おそくまで飲み会になって、彼を泊めてしまう。

しかしその彼は、亡くなっていたと聞いて衝撃を受ける。
実際には、亡くなったバイク好きの兄が登場していたのだが……。

あり得ないような話だが、ちょっと泣かせる。
凪が出かけていたのは、【さいはての彼女】で描かれた場所だった。

冒頭と最後が、キチッとつながった。

 

一つ一つが面白いので、出来れば後日談も知りたいものだ。
とは言っても、同じような話が続くとうんざりかもしれない。

【旅行に行けなかった友人と、母親への手紙】は、【ハグとナガラ】という二人を主人公にした短編集にも収められている。

 

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