大山誠一郎【密室蒐集家】
著者:大山誠一郎
価格:748円
カテゴリ:一般
発売日:2015/11/10
出版社: 文藝春秋
レーベル: 文春文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-16-790488-3
消え失せた射殺犯、密室から落ちてきた死体、警察監視下で起きた二重殺人。密室の謎を華麗に解く名探偵登場。これぞ本格ミステリ!
「密室蒐集家」という人物が、捜査中の関係者のところに現れ、推理を聞かせて去って行く
【柳の園 一九三七年】は、文字通り「女の園」である戦前の女学校が舞台。良家の子女が集まる学校での事件とあって、注目を浴びている。
【少年と少女の密室 一九五三年】は、この少年と少女があまりにも哀れだった。
同じタクシーに三度巡り会うなど、不自然な話が多いが。
【死者はなぜ落ちる 一九六五年】では、おなじみチェーンロックの密室登場。
アパートにおける住民同士のトラブルというのは、古くて新しい問題かもしれない。
それにしても、そのチェーンを、最初の段階でかけていないというのが、むしろ不自然。ま、それなら事件の「目撃」も起きなかったのだが。
この年は東京オリンピックの翌年で、登場人物の一人が「東洋の魔女」と似ているといった表現が出てくる。
実はこれが、伏線にもなっていた。
つづく【理由ありの密室 一九八五年】では、【柳の園】の女学生が登場する。
彼女の孫が警視庁に勤める刑事になっており、事件に遭遇するのだ。
今回は密室の謎と言うよりは、密室でなければならない理由を探すのが目的。
密室蒐集家が謎を解くのは祖母が経営しているレストランで、彼に46年ぶりに会えた祖母は非常に喜ぶ。
最後の【佳也子の屋根に雪ふりつむ 二〇〇一年】は、三好達治の詩をモチーフにしているだけあって、雪景色が美しい。
だが、あまりにも偶然すぎ。それも【少年と少女の密室 一九五三年】のような出会いだけではなく、人間関係の偶然まで使うに至っては、とせっかくの題材がもったいなくなる。
解説氏は、それを含めて絶賛していらっしゃったが。
著者の作品はかなり好きなので、もう少し真っ当に勝負して頂きたい。
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