歌田年【紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人】
著者:歌田年
価格:759円
カテゴリ:一般
発売日:2021/02/04
出版社: 宝島社
レーベル: 宝島社文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-299-01376-7
どんな紙でも見分けられる男・渡部が営む紙鑑定事務所。ある日そこに「紙鑑定」を「神探偵」と勘違いした女性が、彼氏の浮気調査をしてほしいと訪ねてくる。
冒頭の描写に既視感を覚える。
新宿、探偵、冴えない事務所。
どうやら著者も意識しているようで、依頼人は紙と神を間違えて「渡辺探偵事務所の神探偵」がいると思ってやってくる。
ここで一気に、親近感がわく。おお!ここで沢崎登場とは(実際には依頼人の頭の中だけだが)。
で、本書だが、渡辺ならぬ渡部は「紙」にかけては何でも判る。喫茶店のコースターの材質から、ちょっとした冊子のことも。
だがこの依頼人の調査の手がかりは、プラモデルの写真一枚。
つてを頼って「伝説のモデラー」だという土生井と出会う。大手の不正を暴いて干されてしまった土生井は、ゴミ屋敷に住んでいる。
この土生井のキャラクターも、彼をあがめる自称弟子のメールも楽しい。
土生井はメールもSNSも知らないのが、どんどん使いこなせるようになっていく過程(それは依頼人との絆が深まっていく過程でもある)も楽しめる。
そしてその「事件」は見事解決して感謝されるが、今度は彼女の紹介で妹が行方不明になった女性の訪問を受ける。
これまた、手がかりは模型のみ。
「紙」と「模型」の解説だけをとっても、引き込まれる一篇だった。
このミスで大賞を取った作品らしいが、著書の他の作品はない模様だ。
元編集者でもある著者の他の作品が出版されますように。
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