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2021.09.07

小湊悠貴【ホテルクラシカル猫番館 横浜山手のパン職人4】

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著者:小湊悠貴
価格:649円
カテゴリ:一般
発売日:2021/04/20
出版社: 集英社
レーベル: 集英社オレンジ文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-08-680375-5

 

見合いを断ったことを兄に責められ、とっさに「恋人がいる」と噓をついてしまった紗良。すると兄は猫番館に宿泊の予約を入れてきた!? 困った紗良は、要に彼氏のフリを頼むことにす...
横浜山手の洋館ホテルを舞台に、個性豊かなホテル従業員と、束の間の安らぎを求める宿泊客がおりなすハートウォーミングストーリー。

今回は、猫番館で働く人たちのそれぞれの物語を中心にして進んでいく。

冒頭作【思い出はバターの香り】では、沙羅の兄冬馬登場。祖父の意思をしっかり受けつぐつもりの冬馬は、逆らって家を出た沙羅や叔父の誠をやや軽んじている。
その冬馬が婚約解消で見せた相手への心遣いで、意外と優しい面がわかる。

紗良の(偽の)相手の要ともうまくいきそうなのだが、紗良はあっさり嘘だったことを打ち明けてしまう。

【箱入り娘の憂鬱】では、留学していた要の妹が帰国して初登場。彼女は紗良に対抗心を燃やす。

【シンデレラではないけれど】では、ホテルのオーナーであり要の母親の綾乃とその姉の話。

このオーナーは、夫誠一郎と紗良の叔父誠が仲のいいのを、ひそかに妬いている。

プチ家出をしてホテルに泊まった姉と、昔を懐かしんで一緒に過ごす綾乃。
何不自由なく暮らしているが、やはり常に世界中を飛び回っている夫と過ごす日が少ない彼女は、さびしい。

綾乃から連絡を受けた姉の夫と息子が、チェックアウトする姉を迎えてきているのが、姉妹それぞれにそれぞれの幸せについて考えさせてくれる。
日常というのは、そうして流れていくのだろう。

【1/2のメロンパン】では、こわもてのシェフ隼介の物語。

父母が離婚し、母の実家のある長野で育った  。大学生だった兄は父の元に残り、その兄が訪ねてきた時の話から始まる。

部活で腹ぺこだった彼がいつも惹かれているパン屋のそばで、迎えに来た兄と出会う。
兄に誘われ店に入った彼は、たったひとつ残っていたメロンパンを、兄と半分こして食べる。
というのが導入で、成長して料理人になった彼と、以前働いていた兄の店での事件など。

彼にとって今いる猫番館が一番の場所であること。
そこのパン職人である沙羅がやいたメロンパンを、かつて去った兄の店で食べるという終わり方。

長野では「平等に」といいながら自分には大きい方をくれた兄だったが、今回は等分に割ってくれた。
それは兄が、弟をしっかり認めてくれている証だった。

 

紗良と要の関係は、お芝居で「カップル」を演じたことで、少しは距離が縮まったようだ。
最後の要のセリフ【紗良さんに似合う花】は、果たして本心なのか。それとも……。とあるが、まさにその通り。
この分では、続編ありかな?

 

本書は、人と人とが交わることの素晴らしさと難しさを教えてくれる。といった堅苦しいことではなく、サラッと読めて楽しかった。
シリーズものは続けてではなく、こんな風に少し時間をおいて読んだ方が楽しめるかもしれない。

 

 

 

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