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2021.09.23

有栖川有栖【妃は船を沈める】

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著者:有栖川有栖
価格:550円
カテゴリ:一般
販売開始日:2015/12/25
出版社: 光文社
レーベル: 光文社文庫
ISBN:978-4-334-76404-3

「妃」と呼ばれ、若い男たちに囲まれ暮らしていた魅惑的な女性・妃沙子には、不幸な事件がつきまとった。友人の夫が車ごと海に転落、取り巻きの一人は射殺された。妃沙子が所有する、3つの願いを叶えてくれる猿の手は、厄災をももたらすという。

別々に書かれた【猿の左手】と【残酷な揺り籠】の間に「幕間」というショートショートを挟んで、少し関係のある中編2篇を収録したもの。

最初の【猿の左手】や「幕間」に出てくる、大阪南港にある外国人船員目当ての喫茶店が面白かった。
その店長である女性のたたずまいや、BGMの選曲など、行ってみたいなと思わせる。

二度目の訪問のあと、アリスが『又来るよ』といって去る。
すぐ「又来る」「またね」の「又」について思いを巡らす。
店の雰囲気から感じるのか、ちょっとノスタルジックな切ないような描写である。

 

それはさておき、後半でも火村は駆り出される。

大阪で大きな地震が起き、恩のある夫妻を気にして駆けつけた日下部という男が見たのは、その夫妻の離れに住んでいた加藤が倒れている姿だった。
夫妻も、ワインに入っていた薬で眠っていて、地震に気づいてもいなかった。

その現場へ行って夫妻と対面。

夫が挨拶し、続いて妻が現れたときは、心底仰天した。

なるほど! 本書のタイトルの意味が、ここで解った。

火村は、2年前に彼女が実際には糾弾されなかったのを意外に思ったようだ。
そして、ここでは彼女に対して徹底的に容赦ない。

火村は、絶対に殺人を許さないのだ。
動機は違っても、ポワロと相通じるものを感じる。

そして再度、冒頭の「はしがき」を読んで、本書が一冊になった意味が解った。

 

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