垣谷美雨【希望病棟】
著者:垣谷美雨
価格:759円
カテゴリ:一般
発売日:2020/11/06
出版社: 小学館
レーベル: 小学館文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-09-406836-8
共感の嵐を呼んだヒューマン・ドラマ『後悔病棟』に続く感動の長編!!
シリーズもので同じような話が続くので読むのをよそうと思ったのだが、せっかく購入したのだから一つくらいは読んでおこう。という程度の意識しかなかった。
【後悔病棟】は一つずつの話が独立していたが、今回は摩周湖が担当する患者二人とその関係者の話だ。
摩周湖は、ルミ子に輪をかけた「空気の読めない女医」である。
心配したルミ子は、自分の聴診器を花壇に隠し、その側のベンチでランチをしている摩周湖が拾うように仕向ける。
魔法の聴診器の霊験はあらたかで、摩周湖は二人の心の声が聞こえるようになる。
患者の一人桜子は、施設育ちの高校生。
大人はまったく信用できないと思い込んでいる。
母親は、桜子を捨てたのだった。
貴子は代議士夫人だが、キャバクラでその代議士に見初められたといういきさつがある。
若い頃、彼女は自分の赤ん坊を捨てた。
捨て子の桜子と、子どもを捨てた貴子。
キーワードは、「熊本」と同じ年齢。
「もしかしたら」と思った摩周湖の提案で、二人は別々にDNA検査を受ける。
同じシリーズでも切り口が違って、かなり楽しめた。
いや、楽しめたというより、いやでも世間の不条理に憤らずにいられない。
貴子の行動によって、姑が変わっていくのが面白かった。この人は夫と違い、かなり頭のいい人だ。
桜子も、どんどん自分のやりたいことを見つけて進んでいく。
脇役だが、施設の料理担当者が素晴らしい。
高校を出てから桜子はこの人の家に寄宿させて貰い、その娘のすすめで海外へまで羽ばたこうとしている。
ふしぎなのは、摩周湖に診査付き聴診器をそっと譲ってくれたルミ子が、またもや院内のトラベルメーカーになっていること。
この聴診器の効果は、永遠につづくのではなかったのか?
誰かに引き継ぐことという制約ゆえか、次の誰かを見つけると続編が必要になってくるからか?
摩周湖が帰省したとき、母が休暇で帰ってくる。
おそらく生まれて初めて母子の話し合いがあって、聴診器のふしぎな縁を知ることになる。
著者のこれまでの本の中で、イチオシかもしれない。
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