« 「12月の読書メーター」まとめ | トップページ | 家計簿 »

2022.01.02

降田天【偽りの春】

Photo_20220101121501

著者:降田天
価格:704円
カテゴリ:一般
発売日:2021/09/18
出版社: KADOKAWA
レーベル: 角川文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-04-111876-4

この”おまわりさん”からは逃げられない。日本推理作家協会賞受賞作!
“落としの狩野”と呼ばれた元刑事の狩野雷太が5人の容疑者と対峙する、心を揺さぶるミステリ短編集。

 

いずれも犯人側から始まる倒叙型ミステリー

冒頭の【鎖された赤】を読み始めた頃は、これが狩野を描いた連作ものであることにはまったく考えが及ばず、ややエロチックな設定だなと思いながら読んでいた。
途中で、狩野登場。

狩野は優秀な刑事だったらしいが、何か原因があって今は交番のお巡りさんをしている。
しかし管内のことは巡回してよく知っており、住民の環境も理解している。

次が表題作【偽りの春】

辛い過去を持っていて今は詐欺師のリーダーが主人公。
すんでいるところが安普請のアパートで、隣の声が筒抜けというのが大きなヒントになる。

彼女は隣家の男の子を可愛がっており、ランドセルを買ってやると約束している。

その男の子との別れは辛かったろう。
これまでで唯一、愛情を注いだ相手かもしれない。

ここでも、狩野の住民観察が生きてくる。

【名前のない薔薇】

今度は泥棒が主役。

薔薇の新品種を作り、それを登録するまでの課程ってすごいんだなぁ。
薔薇に限らず、新しい種の登録というのは大変なものなのだろう。

この辺で、狩野の過去が少し出てくる。
「落としの名人」と言われた狩野は、行きすぎた取り調べが元で被疑者の自殺を招く。

これが、後々効いてくる。

【見知らぬ親友】

この手の話は嫌悪感がある。
ベタッとすり寄ってくる金持ちのお嬢さん。
その「お金」と「ゆすりの言葉」で、貧しい女子大生を支配している。

もっともそれは、この話の主人公の思い過ごしの面もあったのだが。

ここでも、天才的な学生(舞台は美術大学)が慕っていた教授に殺された挙げ句、火を放たれて焼けてしまうという残酷な終わり方をする。

【サロメの遺言】

脚本家がタレントを殺したとされる事件。

その内、【見知らぬ親友】の後日物語だと判ってくる。
【見知らぬ親友】で犯人とされた容疑者の父が、ある意味影の主人公。

 

狩野雷太のよき部下だった月岡が一課に呼ばれることになるという終わり方で、何となくホッとした。
彼は狩野の薫陶の元、優れた刑事に育っていたのだ。

シリーズだったら、もっと読みたいな。

 

|

« 「12月の読書メーター」まとめ | トップページ | 家計簿 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「12月の読書メーター」まとめ | トップページ | 家計簿 »