松本清張【男たちの晩節】
松本清張
572円
カテゴリ:一般
発売日:2007/01/25
出版社: 角川書店
レーベル: 角川文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-04-122759-6
昭和30年代短編集(1)。ある日を境に男たちが引き起こす生々しい事件。「いきものの殻」「筆写」「遺墨」「延命の負債」「空白の意匠」「背広服の変死者」「駅路」の計7編。「背広服の変死者」は初文庫化
大半が定年過ぎた男たちのその後の生活を描く。いずれも読んでいて辛い話が多く、読後感がいいとは言えない。だが、多分多くのこの世代の共感を得ることだろう。
現役時代かなり上の役だった人たちの定年後の集まり。
そこへ行って嫌な気持ちになるのが判っているのに、元同僚や先輩のあまり羽振りのよくない姿に密かな喜びを感じたいが為に参加する【いきものの殻】。抜け殻ということか。
定年後息子の家で疎んじられながら暮らす、元中学校長。
若いお手伝いが居着かない中、新しく着た中年のお手伝いに、ふと惹かれる。
折から息子に古い書類の「筆写」を頼まれ、その中の文言に刺激されて妄想にふける。
自分の気持ちに折り合って暮らさねばならない悲哀【筆写】
心臓病持ちの小さな会社の社長。
発作を繰り返す度に、何とか生き抜いて会社を発展させようとして手術に挑む。
だが、今度はそのための借金に追われ、自ら死期を早めてしまうとは。
まさに【延命の負債】だった。
次の【空白の意匠】はこれが表題作だった短編集で読んだ。
新聞社の広告部長が、出された広告の上にその商品名での事故により詰め腹を切らされる話だ。
最初に読んだときにやりきれない気持ちになった。細部は忘れていたが、その経緯は意外と覚えていた。
次の【背広姿の変死者】も、舞台は新聞社広告部。
高卒の主人公は、来る日も来る日も広告の校正に関わって一生を終えるのに耐えられず、定年後を想像して絶望する。
著者は朝日新聞社の植字工だったと思う。
彼の場合は見事才を活かし、多くの読者を持つ大作家になった。
最後の【駅路】も、わびしい話だった。
あまり居心地のよくない家庭から逃れるための工作の破綻。
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