松本清張【失踪の果て】
著者:松本清張
価格:616円
カテゴリ:一般
発売日:1987/10/12
出版社: 角川書店
レーベル: 角川文庫
利用対象:一般
ISBN:4-04-122747-X
中年の大学教授が大学からの帰途に失踪し、赤坂のマンションの一室で首吊り死体で発見された。自殺か他殺か。表題作の他、「額と歯」「やさしい地方」「繁盛するメス」「春田氏の講演」「速記録」の計6編。
まだ読んでいない本があったのか。色々な分野の短編5つ。
表題作【失踪の果て】
一人の大学教授が失踪した。
いつも通り、定時に大学を出て、毎日のルートの途中までは追える。
だがそのあと、忽然と消えてしまった。
謹厳実直、敵はない。さして目立つ存在でもなく、著書もそんなに売れないので生活はつつましい。
そこへ出てきた、女性疑惑。
だが、家族も職場の同僚も、絶対に女性問題はないという。
捜査本部は解散し、人事異動もあった。
その移動した主任が、ふと目にした雑誌の記事。
どこの職場でも、地位には定数が決まっている。
自分勝手な動機で人を一人抹殺した犯人に、怒りを覚える。
【額と八重歯】
昭和3年の出来事で、朝日新聞という実名も出てくるし、もしかしたら本当にあった事件なのだろうか。
気持ちの悪いバラバラ事件。
刑事たちは被害者の頭部のアルコール漬けを日々見ながら捜査を続けたが……。
こちらも捜査本部解散、迷宮入りかと思われた事件が、一人の巡査の記憶から解きほぐされる。
後味はいいものではなかった。
犯行は残忍だが、そこに至るまでの犯人たちの心情を思うと、このまま未解決だった方がよかったような。
しかし巡査のお手柄とそれをスクープした新人記者の活躍は、この短編の救いだった。
最終部分は、スクープ記事を書く記者と、それを点検して印刷に廻すデスク。目の前で出来上がっていく新聞を見る思いだった。
当時の「サツ廻り」は、電車と徒歩で各署を移動していたのか。
【やさしい町】
この「やさしい」というのはどういう意味か。
飯田市を指すようだが、書かれている風景はなつかしい。
主人公の身勝手な振る舞いがやがて破滅を招くのだが、因果応報だろう。
やはり松本清張は面白い。
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