松本清張【偏狂者の系譜】
著者:松本清張
価格:704円
カテゴリ:一般
発売日:2007/03/24
出版社: 角川書店
レーベル: 角川文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-04-122761-9
昭和30年代短編集(3)。学問に打ち込み業績をあげながら、社会的評価を得られない研究者たちの情熱と怨念。
※本書は、昭和30~40年代作品群から、研究者たちの孤独をテーマに4作品を選び、新たなタイトルを付けたオリジナル文庫が底本です。
「笛壺」と「皿倉学説」は、よく似たような話だ。
どちらも一世を風靡した研究で名声を誇っていたが、女に溺れて破滅していった男を描く。
最初は、女から誘ってきた。どちらも醜女に近いが、当時はそれも魅力だった。
今はその女からもさげすまれ、一人孤独を託つ。
「皿倉学説」については、他の短編集にも収録されているようだ。
だが、この一篇に関しては、採銅の話というより、この論文を書いた皿倉の研究と、それを元にした採銅の「想像」とからなっている。
採銅は、その中に出てくる、皿倉の実験という言葉に引っかかった。
それは、皿倉の実験が猿を50匹使ったというものだった。
彼が講演中に、「サルの体重は?」という質問があり、それへの応えは「60キロ」だった。
60キロの猿?ということは……。これは実に恐ろしい想像になる。
採銅の引っかかりを、彼の元弟子を始め学会のものたちはいささかも気づいていない。
すべては彼の想像ではあるが、しかし戦争末期に実際に行われたものであったとすれば。採銅は断定してはいないが、想像の世界で実験をしてみる。結果、皿倉の結論が導き出されると思うのだった。
次の「粗い網版」は、特高警察官が密命を受けて、勢力を伸ばしつつある新興宗教団体を調べる話。
5・15事件と2・26事件とを示唆しながら、官慶が対象団体を追い詰めていくいわば手法が語られていく。
こちらも、ことが大きいだけに先の話よりもっと恐ろしい。
最後の「陸行き水行き」はどこかで読んだことがある。
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