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2022.07.02

夏目漱石【行人】

Photo_20220701113501著者:夏目漱石
価格:649円
テゴリ:一般
発売日:2011/01/01
出版社: 新潮社
レーベル: 新潮文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-10-101012-0

「他の心」をつかめなくなった人間の寂寞とした姿を追究して『こころ』につながる作品。用語、時代背景などについての詳細な注解、解説を付す。

 

ずっと以前に読んでいて中身は殆ど忘れているはずなのに、次郎の友人三沢と精神を病んだ「娘さん」のことと、和歌山での兄嫁との一泊についてはよく覚えている。

【彼岸過迄】の友人もそうだが、どうしてこれら知識人たちはウダウダとつまらないことで悩むのだろう。

【彼岸過迄】の千代子にしても、本作の兄嫁直にしても、特段変な行動をしているわけではない。

これらを解説した論はいろいろあるけれど、男の優柔不断さがもたらす、お互いにとっての不幸でしかない。

妻をも信頼できないとして、あろうことか実の弟を使って妻を試すなど、気の毒としか言いようがない。

妻のセリフに「これでも一生懸命している」というようなことがあるが、本当にその通りだと思う。
自分に必ずしも好意的でない姑や意地の悪い小姑たちに囲まれて、気の抜ける時があるのだろうか。この一見茫洋とした態度は、自分を守るためのものかもしれない。

そして和歌山での「男はいざとなったら案外意気地がない」といった言葉に、ドキッとさせられる。

 

だがなぜか、本書は好きだ。

大阪や和歌浦あたりの描写も、当時と自分が知っている頃とはあまり違わず、それも親しみを持つ所以だろうか。

 

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