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2022.09.03

中島京子【樽とタタン】

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著者:中島京子
価格:605円
カテゴリ:一般
発売日:2020/08/28
出版社: 新潮社
レーベル: 新潮文庫
サイズ:16cm/242p
利用対象:一般
ISBN:978-4-10-102231-4

懐かしさと温かな驚きに包まれる喫茶店物語。

 

いわゆるほのぼの系の本とは違い、著者の書き方はかなり露骨(だと思う)。表現ひとつにしても、ほのぼの系にはあまり出てこないような言葉がある。

それはさておき、放課後を喫茶店に預けられている少女が見た「大人の世界」。

その喫茶店には大きなコーヒー豆の樽がアクセサリとして置いてあり、少女はその中に入って色々見聞きする。
表紙カバーには樽に座っている少女が描かれているが、本当は中にはいって開いている口から顔を出しているのだ。

登場人物がいずれも一筋縄でいかないところが、面白いというか、何というか。

【ぱっと消えてぴっと入る】がよかった。

少女の就学前。保育園に馴染めぬ娘のために、父方の祖母がやってきて同居する。

ふたりは昼間を公園で過ごしたりしているうちに、(あとで判ったのだが)この喫茶店にも出入りするようになる。

母は、4人分の朝ご飯と二人用(だが恐らく自分用も)のお弁当とおやつも作り、自転車で仕事に行く。
こちらも凄いことだなと思えた。

で、その祖母は、死後の世界を信じていない。これは田舎の住民としてはあまりないような。
「ぱっと消え」たらそれでおしまい。
ではなく、生きている誰かの胸の中に「ぴっと入る」。

ここで開かされた祖母の長男戦死の話が響く。おそらく、自分の胸の内にも入っているから。
そう、母親はいつも、自分より先に逝った子どものことを思っているのだ。

 

収録作はほかに

「はくい・なを」さんの一日
ずっと前からここにいる
もう一度、愛してくれませんか
町内会の草野球チーム
バヤイの孤独
サンタ・クロースとしもやけ
カニと怪獣と青い目のボール
さもなきゃ死ぬかどっちか

ユニークな登場人物たちが楽しかった。

 

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