坂井希久子【ほかほか蕗ご飯】
著者:坂井希久子
価格:638円
カテゴリ:一般
発売日:2016/06/01
出版社: 角川春樹事務所
レーベル: ハルキ文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-7584-4000-4
美味しい料理と癒しに満ちた連作時代小説、新シリーズ開幕。
まず、表紙がいい。
近頃の薄っぺらい男女が描かれたものと違い、並んだ料理の数々が本文を表していて実においしそうだ。
背景の料理人である女性も、後ろ姿でしっかりと料理する様子が表れている。
肝心の物語だが、旗本次男坊(部屋住み)の主人公は、ウグイスを上手に啼かすという特技でもって、一家の稼ぎ頭である。
という設定が、まず面白い。
その次男坊只次郎が、出入りの商人に連れられていった居酒屋「ぜんや」の女将に惚れて通い続ける。
この女将が、もう一人の主人公と言えよう。
そのなかで、大店のあるじなどとも気軽に話し、時に女連中からからかわれる。
理不尽な武家社会の中にあって、かなり自由に生きていく只次郎は、一見弱そうであって芯がしっかりしている。
物語の中心である料理だが、平凡なお惣菜ながらそこに心を込めた一工夫があって、実においしそうである。
おいしいものを素直においしいと言って食べることの出来る幸せを感じる。
表題の「蕗ご飯」は、最後に出てきた。
芹の吸い物も、季節を感じさせる。
5つの短編は少しずつ次へとつながっていく。
そして最後の謎は、解かれずじまいだった。
「次巻へ続く」ということらしい。
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