遠藤彩美【みんなで一人旅】
著者:遠藤彩美
価格:1,870円
カテゴリ:一般
発売日:2020/10/21
出版社: 集英社
レーベル: 集英社文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-08-744170-3
ままならない旅路の果てに待ち受ける、予想外の結末とは。ほろ苦くも温かい、大人の旅物語7編。
冒頭の【男二人は聖地を目指す】
高校時代からの友人同士。名前(愛称)も「アリ」と「ナシ」。
しかし今回の旅はいつもと違った。
マルチ商法にはまったものは、いくら冷静になるよう説得されても耳を貸さない。
その恐ろしさがわかる。
しょっぱなから、あまりいい読後感ではなかった。
表題作【みんなで一人旅】
お一人様限定のツアー旅行というのがあるんだ。
失恋し、思い切って申し込んでイタリアに来た佳乃子は、思いがけぬ出会いで旅を楽しむことが出来た。
この「予想外の結末」はよかった。
こんな旅行、一度してみたかったなぁ。
【癒やしのホテル】
イケメンで、一流の商社に勤め、日々筋トレに励む門松が陥った罠。
何とも嫌な男なので、「予想外の結末」に溜飲を下げた。
【空飛ぶ修行】
とある飛行会社で「ロイヤルクラス」という特別席を獲得するための「修行」なるものがあって、何回か搭乗することで獲得できるようだ。
それを確保するために乗った栞と風馬のカップル。
最初の機内サービスでシャンパンを飲んで乾杯し、気分は上々だが、次第に疲れてくる。
二人の間にギクシャクした空気が流れ、段々口をきくのも億劫になる。
最後の飛行機で出会った知り合いの態度に不審を抱いた辺りからは、これに挑戦した風馬の決意もわかって和解できるのだが。
風馬が飛行機嫌いで、宮崎の実家へ帰るときも新幹線+在来線というのには笑ってしまった。同感だ!
最後に飛行機に乗ったのは、稚内からの帰途だった。
関空への直行便は到着が遅いし、東京経由で帰阪したのだが、東京からは飛行地乗り継ぎではなく、新幹線を使ったのだった。
これが一番よかったかな。
【氷上のカウントダウン】
主人公の主婦は、仕事に疲れてつれあいから一人旅を勧められる。
やってきたのは、真冬のウラジオストック。
そこで出会った女子大生は、読んでいてもイライラする、自己中の若者だった。
なんでもしてもらいながら、文句ばかり。
挙げ句、自分の要求が通らないと知ると、主婦に写真をSNSにアップしてあること無いこと書くと脅す。
この時の彼女の対応が見事だった。スカッとした!
こちらの方がもっとよかった。
【誰も行きたがらない旅】
社員旅行という、「誰も行きたがらない旅」がテーマ。
思いがけず商品が売れたのを祝して、豪華な社員旅行を計画した社長。
その一方では、これを利用してもう一つの計画を練っている人物がいた。
じっくり読んでいると、彼にある計画があるなとはわかる。
一方、一見コミュ障でも、しっかりと人を見ている人物はいるものだ。
【幸せへのフライトマップ】
海外旅行をバーチャル体験できる「空港」が、新宿にある。
本当にこんな場所があったら、賑わうのだろうか?
母を伴ってハワイ旅行へと「出かけた」光里だったが……。
この母親、まだ70代前半のようだが、かなりイライラさせられる。
娘はよく我慢してつきあっていること。親子だから、仕方ないか。
というのは現在で、娘は次第に15年前を思い出す。挙式をハワイでしたので、両家で訪れたハワイ。
その時とその後の嫌な思い出の中から、母の気遣いを思い出したのだ。
この「旅行」は光里に母への感謝を思い出させてくれた。
この「フライト」は実際にあるようで、「執筆にあたり、「FIRST AIRLINES」さんに大変お世話になりました。この場を借りて御礼を申し上げます。」という言葉が本文にあった。
ちょっとサイトを覗いてみると、なかなか好評のようだ。
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