有栖川有栖【虹果て村の秘密】
著者:有栖川有栖
価格:700円
カテゴリ:一般
発売日:2013/08/09
出版社: 講談社
レーベル: 講談社文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-06-277587-8
本格ミステリの名手による珠玉の推理。
有栖川有栖さんだが、残念ながらアリスものではない。
講談社の「ミステリーランド」シリーズの中の一冊ということで、主人公もだが対象も小学生らしい。こういうのを、ジュブナイルと呼ぶそうだ。
推理作家になりたい刑事の父を持つ秀介と、母親が推理作家で自身は刑事になりたい同級生の優希。
12歳の二人は、優希の母が別荘と呼んでいる(実際は実家?)のある虹果て村に、夏休みを利用して遊びに行く。
優希の従姉妹の明日香が、二人の面倒を見てくれる。
しかしその村は、高速道路開通の賛成派と反対派に別れて、村人同士がいがみ合っているという状況にあった。
そんな中、反対派の一人が殺される。
実際の殺人事件が起きてしまったのだ。しかも土砂崩れで村が孤立するという、秀介が好きな密室事件になってしまう。
優希と秀介が単身(二人だが)犯人宅へ乗り込むのは、余りにも無謀すぎる。
また、教師がこんな風に村全体を巻き込んでいる騒動の一方に与していることを明らかにしていいのだろうか?
当然、違う立場の親を持つ生徒もいるわけで、立場上まずいのではないか?
子どもの探偵ものといえば仁木悦子が素晴らしいだけに、少々残念だった。
ミサト先生(優希の母)が秀介に語った言葉が、印象的だった。
ものごとは見たままでもないし、聞いたままでもない。知恵で見抜かないとわからないこともある。
小説家はひとりぼっちの孤独な仕事だから、人からほめられた、けなされた、と喜んだり沈んだりしていてはだめ、世界には自分と原稿用紙しかない、と思って堂々と書きなさい。
このミサトは、元夫(純文学作家)に『いつまでそんなもの(推理小説)を書いているんだ。そろそろちゃんとしたものを書いたら』と言われて、速攻離婚した経歴の持ち主だ。
秀介がミサト先生の書斎で、万年筆を拝借して原稿用紙に小説らしきものを書いてみる場面は、微笑ましい。
あと、小学生に向けた著者のことばや、それぞれの版のあとがきがご自身のミステリ歴のようなもので、面白かった。
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