川上未映子【春のこわいもの】
著者:川上未映子
価格:1,760円
カテゴリ:一般
発売日:2022/02/28
出版社: 新潮社
利用対象:一般
ISBN:978-4-10-325626-7
こんなにも世界が変ってしまう前に、わたしたちが必死で夢みていたものは――
短編集
タイトルの【春のこわいもの】というのは無くて、全体が「ある春(どうやら2020年)のこわいもの」で覆われている。
「あなたの鼻がもう少し高ければ」は、人気のSNSに登場したくて、修正した写真を送って面接にこぎ着ける少女の話。
出てきた面接者は主催者の腰ぎんちゃくらしいが、「整形もしないで来るな」と追い返す。
一緒に来たあちこち整形で顔を整えている少女には、一顧もしない。完全無視。
いくら礼儀知らずの十代でも、随分と無礼なやりかただ。
しかしこの面接で、少女がさほど傷ついていないらしいのには、少し救われるが。
【淋しくなったら電話をかけて】は、二人称で進んでいく。「あなと」と呼びかけられている女性の日常と思い。まるで一人称のような語り口だ。
平気で差別用語を用いているし、嫌な表現も多い。
少し大きめの病院を見て、「なんとか人が死ぬことのできる病院」と言い、それ以前では小さな病院を「死ぬことのできない病院」と書いていた。
【ブルーインク】も、訳の分からないまま終わった。
「ぼく」に手紙(実際には創作)を渡した女子高生は、随分勝手な思考回路を持っているようだ。
終わりは何となく想像つくし、しかし必然性はまったくない。
ただ嫌な読後感だけが残った。
最終話【娘について】は、高校時代に仲良しだった二人のその後の物語。
家庭環境がまったく違った二人は、仲良しに見えてお互いを陥れていた。
という、まったく「こわい話」だった。
この著者のものは、以前に読んだことがあっただろうか?
何かを読んで嫌いになって、遠ざけていたような気もするが。
以前、短編集の中の一作だけを読んでいた。
その時も、嫌な感じがして他を読まなかったのかもしれない。
表紙カバーは大きな袋のようだが、「この袋には、いやなものが一杯詰まっているぞ」と言っているようで、不気味である。
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