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2023.01.27

柴田よしき他【おいしい旅 想い出編】

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著者:柴田よしき 他
価格:792円
カテゴリ:一般
発売日:2022/07/21
出版社: KADOKAWA
レーベル: 角川文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-04-112597-7

魅力あふれる旅先と、その土地ならではの美味しいものがたっぷり詰まった、実力派作家7名による書き下ろしアンソロジー。

 

冒頭は、柴田よしきの【あの日の味は】。

学生時代か卒業した頃、「花園会館」という小さなマンション(というか下宿屋)で一緒に過ごした三人。

その彼女らが、50代になって京都で会って懐かしい味を楽しむ。
ではあっても、歳月は完全に彼女らを変えていた。

三人とも言いたいことがあって、でも全てをアッケラカンと話せるわけでもない。
結局、作家になった美奈も、過去の失恋や今の体調についても語らぬまま、別れた。

「あの日の味」は、多分変わっていないのに、「花園会館」は、無くなっていた。

 

次は福田和代の【幸福のレシピ】はよかった。

パティシエをしていた夫とともに、生まれ育った神戸を離れて東京へ移った琴子。

その夫も亡くなり、30年ぶりに訪れた神戸で出会ったもの。

いい話だった。

こんなおいしそうなケーキ、いくらでも食べられそう。

 

【下戸の街・赤羽】矢崎存美

これも楽しかった。

勤め先のブラックぶりと夫の浮気に疲れ果て、美琴はふるさとの埼玉へ帰ってきた。

中学時代の友だちがカフェを開きたいと聞き、その準備探索(?)に一緒に赤羽に行く。

色々な店を廻って、ひたすら菓子を食べ続けた一泊二日の旅。

彼女を手助けしながら、自分のこともゆっくり考えようと思った美琴。

とにかく、出てくるお菓子がみんなおいしそうで、「ああいいなぁ」と一人つぶやく。
こうした探索に出かけることも、もう無いのかもしれないが。

 

【旅の始まりの天ぷらそば】光原百合

ここで言う天ぷらそばは、山陽本線の糸崎駅で売られているのだという。

ラジオ局の嘱託職員永瀬真尋と局長の他愛のない話に出てくる「天ぷらそば」。
真尋にとって、この蕎麦は、祖父母のところへ行くときしか食べることの出来ない食べ物だった。なぜなら、帰途は糸崎から下車駅まで二駅しか無く、蕎麦を完食できないから。

そして真尋にとって、祖父母宅へ行くことは、夏休みの「旅の始まり」だったのだ。

糸崎駅だが、子どもの頃郡上へ行った帰りに岐阜駅から乗る列車は、ほぼ「糸崎行き」だった。往路の「国府津」もそうだが、その時には縁が無くても、長く覚えている駅名ではあった。

著者は、尾道市出身だ。

 

【ゲストハウス】新津きよみ

昔住んでいた白馬の家がゲストハウスになったことを聞いて、訪ねていった小田切だったが。

実はこの白馬行きは、「あなたの娘より」という手紙が来たからだが、小田切には離婚した妻との間に娘がいた。

それを搦めての話だが、実はもう一ひねりしてあった。同じような年頃のお客が揃う日を狙っての計画だったのだが、かなり偶然に頼りすぎの感がある。

また、小田切から元の妻に連絡が行けば、即企みがばれてしまう。あまりスッキリとした終わり方ではなかった。

 

【からくり時計のある町で】秋川清美

7年ぶりに、ミュンヘンへ一人でやってきた七緒。

7年前は、親友の立花と一緒だった。
その後彼女とケンカ別れをして、今回は一人で来た。

立花が結婚するという噂は聞いた。しかし当然、自分に招待状は来ない。

そして、ミュンヘンへ一人でやってきた。
だが、行く先々で立花とのやりとりを思い出す。

ミュンヘンでは食べる話ばかりだ。

そのあと話は急展開。ま、いい感じで終わった。

 

【横浜アラモード】大崎梢

母の旧友に頼まれて、その方の姑さんを横浜へ案内することになった明穂。

旅行会社に勤めていたこともあって、高知まで迎えに行って横浜へ。

息子たち始めずっと仕事をしてきた散髪屋の常連さんたちにも暖かく送られての旅だったが。肝心の清子さんは二日目の予定をキャンセルしたいという。

しかし何とか本心を聞き出し、清子さんの両親や弟の眠るお墓へ詣でることが出来た。

さらに、息子が予約しておいてくれたホテルのレストランではその弟の娘たちとも再会出来たのだった。

皆で食べたアラモードは、最高の味だっただろう。

 

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