ほしおさなえ【紙屋ふじさき記念館 春霞の小箱】
著者:ほしおさなえ
価格:726円
カテゴリ:一般
発売日:2022/03/23
出版社: KADOKAWA
レーベル: 角川文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-04-111419-3
記念館の閉館イベントの準備や、三日月堂との活版冊子作りの企画が進むなか、...
ハローワークのアイデアが次々出てきて楽しみになるのだが、それも閉館までの期限付なのが悲しい。
何とか、いい形で継承できないものだろうか。
今回も三つの中編から、色々勉強できた。
本書も、「この表紙絵はないだろう」と不満ではある。
【ぴっかり千両】
サークルの連中は、夏休みの遠足で川越より更に遠い、小川町まで赴く。
ここは藤崎の祖母薫子さんの故郷でもある。
ここでの紙すき体験は、さらにワークショップの可能性を広げそうで、指導員松本さんが後日記念館にやってくる。
【墨流しと民藝】
松本さんに簡単な墨流しの実験を見せた貰った百花だったが、今回は本格的に見学することに。
料紙という言葉は聞いたことはあったが、実際に見る機会はこれまで無かったように思う。書道展などで目にしていたのかもしれないが、まったく意識していなかったから。
「書」というとどうしても書道家の方に目が行くが、実は紙も非常に重要なアイテムなのだった。
料紙はもったいなくて使えないといった会話は、非常に納得出来る。
百花だけでなく、自分も綺麗なノートを汚すのに忍びなくて、使わないままのことがあるから。達筆ならともかく、自分の字で汚すのが嫌なのだ。
【春霞の小箱】
ここでは和紙の原料で或る楮の皮むきを体験したりして、ワークショップで出来ることがどんどん膨らんでいく。
薫子さんからは戦争中や戦後すぐの和紙の使われ方を聞いたりして、必ずしも「平和な紙」ではなかったことも知る。
そんな風に前向きに考えていた百花だったが、この時は2019年だったようだ。
世界をゆるがす大きな災害に見舞われ、記念館は閉館セレモニーも出来なくなってしまった。
記念館そのものはビル取り壊しでなくなることは判っていたが、それでも何とか次へ繋げられるはずだったのに。
紙屋藤崎の本社は紙全般を扱っているので、腐食布やマスクにも関係していたことが、この時点でわかる。後付けのような感もあるが。
せっかくここまでシリーズで来たのに、何だか暗い話で終わってしまった。
続刊では、希望が持てるのだろうか?
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