荻原浩他【おいしい旅 初めて編】
著者:荻原浩他
価格:792円
カテゴリ:一般
発売日:2022/07/21
出版社: KADOKAWA
レーベル: 角川文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-04-112598-4
魅力あふれる旅先と、その土地ならではの美味しいものがたっぷり詰まった、実力派作家7名による書き下ろしアンソロジー。
冒頭作坂上司のは、楽しかった。
当番出勤日の仕事を終えてフリーになった「ぼく」は、ふらりと東急の特急に乗って伊豆下田へいってしまう。
見るところが色々あるようで、宿泊まで予約。
そのあと水族館で存分に楽しみ、ロープウェイに乗ったりして、下田という街を堪能する。
この著者、覆面作家だが、一体男性なのか女性なのか?
【遠くの縁側】近藤史恵
これは著者らしい、心温まる一篇だった。
縁側の景色は、だれしもが郷愁を覚えるものらしい。肝心の縁側のある家は少なくなってきているが。
縁側は、やはり外に開けているほうがいいかな。通りかかった人が庭に入って来て一緒に腰をかけられるような。
我が家の縁側は、裏庭に面しているの。それでも、冬の縁側は暖かいし、お月見は出来るが。
【糸島の塩】松村比呂美
小さな旅行会社で働く幸。格安海外旅行を売りつけて前金を取り、あとは倒産に持ち込むという会社の方針に加担させられている。
そんな時に小学校の同級生だったと偽って誘った相手優子は、海外旅行の方には乗ってこず、ボツになった「糸島への旅行」に幸を誘う。
糸島をはじめ北九州のあちこちに二人でレンタカー移動している内に、優子の正体もわかり二人は次第に打ち解けてくる。
糸島の塩をまぶしたおにぎりがおいしそうだ。
【もう一度花の下で】篠田真由美
人間関係がかなりややこしい家庭の、過去と現在の物語。
函館で喫茶店を巡り、マトリョーシカを集めて廻るという異色の展開だった。
笑いは「笑み」でもあるということ。
【地の果ては、隣】永島恵美
「ノスタルジック・サハリン4泊5日の旅」というのに参加した萌衣は、参加者に一人も同世代がいないことにショックを受ける。
「ノスタルジック」とあるように、昔サハリンで暮らした人たちが対象だったようだ。
それでも、街を歩いている内に同行者と口をきくようになり、ほんの少し、その頃のことを知る。
懐かしい土地が「外国」になってしまった彼らの気持ちは、どんなだろうか?
それぞれが、自分の過去を思い出しているようだった。
こうしたツアーの同行者には色々な人がいて、ちょっとだけ踏み込んで話が出来れば楽しいものだが。
【あなたと御茶漬けを】図子彗
これも楽しかった。
家族に虐げられてきたもの同士の、暖かなふれあい。
つらいことを自分から話せる相手は大切だ。
松山空港の「鯛茶づけ」がおいしそうだったけど、もう今はないのだな。
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