仁木悦子【赤と白の賭け】
著者:仁木悦子
価格:660円
カテゴリ:一般
発行年月:1973
出版社: 講談社
利用対象:一般
平々凡々の日常のなかに、ふと忍び寄ってくる7つの事件!
【赤と白の賭け】
赤と白とは、葡萄酒の色。
どちらかに毒を入れておいて試す話しは、有栖川有栖にも出てきた。いや、そちらの方が後からだ。
しかしうまく毒をかわした、この不誠実な男。
命は助かったが、この現場を警察に知られたら、仕事も結婚生活もこのままでは済まされまい。
この男のせいで娘を失った父親にとっては、まさに命をかけた賭けだったのかもしれない。
【石段の家】は、著者お得意の子ども探偵もの。
小学5年生の兄はともかく、2年生の妹が言ったひと言が、母親の濡れ衣をはらすきっかけになった。
それにしてもこの妹、実に大胆なことをしてくれる。
【幼い実】
「幼い実」とは、「るりみ」と名付けられた幼子のことだろうか。
【ひなの首】
ああ、これは結婚した悦子さんが語り手だなとは、すぐ気づいた。「テッツン」という言葉が出てきたからだ。
【悪漢追跡せよ】
これも子ども探偵。
父が亡くなっていて、どうやら母親が再婚したそうなのが気に入らない姉。弟は、素直にその男性になついている。
男性が付き合っていた女性が殺されて、彼ばかりか母親までもが疑われそうになって慌てる姉。実は男性のアリバイ証明になる手紙を、自分が破って捨ててしまっていたのだ。
そこから姉弟の探偵譚がはじまる。
ビーズを落とした跡をたどる探偵ごっこが役に立った。
【黄色の誘惑】
黄色大好きな主婦が、出来心からレモン色のスカーフを万引きしてしまう。
それを見ていたという一見紳士風の男から、万引きのことを口外しないことを条件に、とある家から赤ん坊を連れ出すことを約束させられる。
その赤ん坊は紳士の子で、離婚した妻が再婚して育てているのだという。
言われるまま実行した主婦だったが……。で、ドキドキしながら読んだ。
いい方向で解決して、本当によかった。
【霧のむこうに】
記憶を失った男と、彼を拾ってくれた女。子どもが出来たが、生みたい女に対して、男は失われた過去を求める。
結果、妻が悲しむ方向に向かずに、本当によかった。
これからは、お互いを支え合いながら暮らしていけるだろう。
本書には、ガスで人が亡くなる話しが出てくるが、この頃(1970年代?)にはまだ推理小説のネタにガスが使われていたんだ。
次第に天然ガスになって、「ガスで自殺は出来ません」という話しが広がってきたように思うが……。
やはり、仁木悦子さんの描く子どもたちは生き生きしているなぁ。
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