大崎梢 他【ここだけのお金の使いかた】
著者:大崎梢他
価格:770円
カテゴリ:一般
発売日:2022/12/21
出版社: 中央公論新社
レーベル: 中公文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-12-207291-6
七名の人気作家が「お金」にまつわる悲喜こもごもを描く、書き下ろし
それぞれ視点が違うが、楽しかった。
冒頭作【百万円分の無駄】は、新津きよみ。
だれしも、「宝くじが当たったら」と思うことはあるだろう。そして妄想する。
どれくらいだったら、かなり現実的な(?)妄想ができるのか?
ここでも分析しているが、「百万円」というのは妥当な数字ではないか?
ところがここの主婦は、実際に「百万円」を手に入れた。夫や娘にちょっとした不満を持っているので、ナイショで使っていく。
一つ一つが、ささやかなものである。
小さな不満でも、相手に伝わっていないと徒労感が増すのではないか?
次の原田ひ香は、最近割合読むようになった。【三千円の使い方】など、面白かった。
今回は、【一生遊んで暮らせる方法】。ぜひ、伝授願いたいものだが……。
学生アルバイトから、卒業してもそのまま非常勤として役所で働いている妻が語り手。正採用になるには試験がむずかしく、非常勤でも福利厚生はついていることに、ほぼ満足している。
その彼女が役所のサークルの交流会で出会った夫は、節約家の堅実なサラリーマンだった。
彼女の語りで話が進んでいくが、途中たびたび夫らしき人物のTwitterが入る。
夫の理想通りの家庭(だと夫は思っている)だったが、この人はかなり独りよがりだ。
会社でうまくいってないのも、ひょっとしたらその性格によるところがあるかもしれない。
でも、やっぱり「自分は家事をしている」と思っていたのがおかしい。ほんの一握りの「手伝い」なのに、家事を担っていると勘違いしているとは。
「一生遊んで暮らせる方法」を編み出した(と思っていた)夫だが、都合の悪いことは「そのうち」で片付けてしまうなど、やはり現実を伴わない机上の空論に近かった。
大崎梢【12万円わんこ】では、タレントの犬が意外と薄給(?)なのに驚いた。替わりはいくらでもいるからと。12万円の犬は高いと思うが、ペットショップで売れ残ってしまったわんこの値段だった。
この子、いい飼い主に出会えてよかった。
あと
永島恵美【廃課金兵は買物依存症の夢を見るか?】
同じ大学に勤めるアラフォー女子二人の、ZOOMによるやりとりがメイン。40代は、まだまだ若者言葉を使うのか?テンポ良い会話だが、こんなものなのか?
その中で相手の住所を特定したり買物依存症を突き止めたり、ちょっとしたミステリの様相も見せる。
福田和代【わらしべ長者のつくりかた】
これは楽してお金を手に入れたい若者の話で、ついていけなかった。
図子彗【塾に行かない子どものための五つのクリンクス】
今時の小学生は大変だな。
離婚して小学5年生の息子を育てている薬剤師。4年生の時の学級が崩壊していて、碌に授業が進んでいなかった。
息子の国語力のなさに愕然とする。
それよりも、課金するゲームをしているとは驚きだった。
それを巡ってのトラブルもあって、親も大変だ。
松村比呂美【二千万円の差額】
父親が自死して以来、母親は父親のものを片付けることが出来ない。
この「二千万円」というのは、定年後に保険金を「三千万円」から「一千万円」にしようと自分が提案した、その差額だ。
そのために、夫は自死したのではと、今も母親は自責の念に駆られている。
パニック障害を起こし、家の中はともかく、スーパーへも行けないし、乗り物にも乗れない。
ふと見つけたボランティアサイトで、公園の花壇整備を見つけて恐る恐る参加してみる。その時一緒についてくれた女性には、何故か素直に自分の症状を話すことが出来て、少し前向きになれた。
娘一家が支えてくれているのが、救いだ。
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