木内昇【占】
著者:木内昇
価格:781円
カテゴリ:一般
発売日:2023/02/25
出版社: 新潮社
レーベル: 新潮文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-10-101882-9
いつの世も尽きぬ恋愛、家庭、仕事の悩み。“占い”に照らされた己の可能性を信じ、逞しく生きる女性たちの人生を描く七つの短編。
【時追町の卜い家】【山伏村の千里眼】【頓田町の聞奇館】【深山町の双六亭】【宵町祠の喰い師】【鷲行町の朝生屋】【北聖町の読心術】
中で、【山伏村の千里眼】が非常に面白かった。
山伏村というへんぴな山村で育った杣子は、町へ出てきてカフェに勤める。
目立つ容貌でない彼女は、女級ではなくレジ係になって、客や女級たちの話を聞いている。
杣子が暮らしているのは、大叔母の家。
そこは近隣の女性たちが頻繁に立ち寄って、叔母に愚痴を漏らしていく。
帰宅して彼女らの話も耳にしながら、いつしかグチへの対応をしている内に、「山伏村の千里眼」という異名を取る一種の占い師になっていった話。
黙って周りの話を聞いているって、思わぬ副産物があったりして面白い。
バスの中などでひっきりなしに喋っている女子連れに出くわすと、色んな情報が入ってくるようなものか。
冒頭作【時追町の卜い家】の舞台は大正の初めくらいだろうか。一人暮らしの桐子が翻訳の仕事をして自立しているのが驚きだった。
この桐子は、【頓田町の聞奇館】でも登場する。ここで出てくる知枝が一時期英語を習っていたのだ。知枝は、あろうことか桐子の祖父の写真に恋し、「口寄せ」までしてもらう。
あげくその妻(桐子の祖母)まで呼び出して貰い、自分の生き方まで変えようとするのだ。
【北聖町の読心術】は、取り柄のないことを自覚している佐代が、自分に好意を寄せてくれているらしい男性の過去に拘るあまり、占い師をはしごして、結局何も信じられなくなる話。
【山伏村の千里眼】で占いをするのに疲れて元のカフェに勤めている杣子がちょっぴり出てきて楽しかった。
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