青山美智子【月の立つ林で】
著者:青山美智子
価格:1,760円
カテゴリ:一般
発売日:2022/11/09
出版社: ポプラ社
利用対象:一般
ISBN:978-4-591-17535-4
つまづいてばかりの日常の中、タケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』の月に関する語りに心を寄せながら、彼らは新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく。
【一章 誰かの朔】
元看護師の怜花は、職場の人間関係に疲れて退職し、今は家で家事をしている。
隣家の猫を預かることになったが、再就職の面接では落とされる。
ラジオのポッドキャストを聞くのが楽しみだ。
そんな折、ネットで自分の姓の一字である「朔」という名の指輪を見つける。「新月」をイメージしたものだという。
必ずしも新しいことにチャレンジするのではなく、「リセット」という考え方を指輪の作者に教えて貰えた気がして、怜花は医療系の仕事を探すのだった。
姿の見えない「新月」は、巡り来る最初の日なのか。
この日を何かのはじめの日にするのも、いいなぁ。
【二章 レゴリス】
宅配便の配達をしている「僕」は、かつてお笑い芸人になりたいと夢があった。
せっかく内定を貰っていたのに、実際に養成所に入って芸人を目指す。しかしあっさりと挫折。しばらくは「ピン芸人」ではあったのだが……。
ここで突然、【一章】の怜花の弟 朔ヶ崎佑樹が出てきてビックリする。
彼は「僕」がコンビを組んでいた相棒「サク」だったのだ。
「レゴリス」というのは、月の表面の細かい砂のことのようだ。まんべんなくまかれた砂があるので、満月はお盆のように見えるのだと。
本編の最後は、ポッドキャストによる「新月」の話だった。「僕」もタケトリ・オキナのポッドキャストを聞いているのだ。
見えない新月に、願いをかける。
そしてそのあと、祈りを込める。
そこに変わらずいてくれる大きな存在に。
この辺まで来ると、登場人物の互いの出会いがかなり作り物めいてくる。
【三章 お天道様】
【四章 ウミガメ】
【五章 針金の花】
【二章 レゴリス】での「僕」は、【四章 ウミガメ】で宅配便の伝票の署名「本田」でのみ登場。
父が出ていき、母子家庭で育った【四章 ウミガメ】の少女は、「夜風」と名付けたスクーターを相棒にしてアルバイトをしている。
その配達先で出会った同級生は、しかも朔ヶ崎佑樹が所属している劇団主宰の息子だった。
彼の母親も、父と喧嘩して出て行っている。
「母恋し」の気持ちが、彼のもう一面を引き出したのだが、それが明かされるのは最終話だ。
「夜風」は、ピン芸人「僕」のSNSに唯一「イイネ」をつけてくれていた。
【五章 針金の花】は、切り絵を極めたくて一人暮らしをしている女性の話。
ここでPodcast たけとり・おきなの「つきない話」の謎も解明。
彼女が電話で医療相談を受けたとき、親身に相談に乗ってくれたのが怜花だった。
「一章」で再就職が決まらず悩んでいた怜花は、電話相談窓口とは言え、医療関係に就職出来たものと見える。
と、好きで読んで来た著者の作品。
まずは大団円ではあるが、著者の作品は概ねこのパターンが多いようで、「感動するでしょ」ではあるが少々食傷気味になってきた。
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