柏井壽【京都スタアホテル】
著者:柏井 壽
価格:662円
カテゴリ:一般
発売日:2020/12/08
出版社: 小学館
レーベル: 小学館文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-09-406855-9
京都を知り尽くした著者が描くハートフルストーリー!
またも「ハートフルストーリー」という言葉に惹かれたのでは決してない。
あまりこういう本が続くと、食傷気味になるのも確かだ。
横浜の高台にあるホテルの物語も面白かったが、今回は少々趣向を変えて、ホテル内に12もあるレストランの話だろうか?
【第一話 『御祓川茶寮』の再婚ごはん】
【第二話 『綾錦』のひとり鮨】
【第三話 『白蓮』の親子ごはん】
【第四話 『風花』のたそがれごはん】
【第五話『アクア』の嫁ぎごはん】
と、各章のタイトルも、それらの店の名が冠せられている。
それぞれの話に出てくる料理がすばらしい。
【第一話 『御祓川茶寮』の再婚ごはん】の和食のお店は、東山が望める絶好の立地だ。
普段は真ん中にあるテーブルを、わざわざ窓際に寄せてもてなしている。
途中、コンロを使う場面があるが、火花が飛ぶのに気を遣う店主に女性客の方が「普段着やから」と軽くいなすのにはちょっと引っかかった。
【第二話 『綾錦』のひとり鮨】では、【鴨川食堂】のむすめ、こいしがやってくる。
思い切り散在して懐具合を心配していたようだが、ホントにどれだけ使ったのか、このお寿司たちに。
【鴨川食堂】は確か既読で、この話の中でも出てきたように、客の食に関するなぞを解くのだった。
だが、中身はまったく思い出せない。
映画(?)、それともドラマにもなっているようなので、観てみよう。
【第三話 『白蓮』の親子ごはん】
岐阜で小さな書店を開いている一家の、いわば再生の物語。
大手書店に勤めている息子は、台湾店の店長に抜擢されている。
このご時世、頻繁に行き来できないことを案じて、母親に一緒に台湾へ行こうと誘う
しかし夫の開いた店を頑なに守ることに拘る母親。
息子は一生懸命気を遣っているが(実にいい息子だ)、母親の頑固はなかなか折れない。
食事中、同じフロアに一人の紳士がいた。彼こそは……。
という何とも偶然が醸し出す物語になっていく。
【第四話 『風花』のたそがれごはん】は、旅館に泊まっている画家夫婦がディナーにだけやってきた話。
芸術家の気まぐれで、予約とは違う店を希望。さぁ困った、北大路料飲部長。
しかも料亭「風花」の板長は東京出張中で、料理を任されているのは若干25歳の少々生意気な青年。腕は立つが、口も出す。
しかしその光が見せるちょっとした言動が、わがままな画家の心をほぐしていく。
画家の振る舞いに、かなりインパクトのある伏線があった。
【第五話『アクア』の嫁ぎごはん】
翌日に婚礼の日を迎えた母と娘の最後の晩餐。
だが替わっているのは、時節柄出席して貰えない方たちに、料理を宅配便で送っているというところ。
式に合わせて、リモートの画面を見ながら、自宅で湯煎したりレンチンしたりして、同じ雰囲気を味わって貰うという趣向なのだ。
その演習を兼ねて、この母子はホテルで同じ手順でディナーをとる。
この場合、料飲部長の北大路は、ほぼ付きっきりである。
二人の話には、度々無き父親が登場する。「お父さんが好きだったあれこれ」が出てくるようにもなっていた。
結婚式だけでも大層な出費だろうに、この夜の宴にはかなりかかっていたのではと、つい気になってしまった。
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