
佐々木譲/〔ほか〕著
文春文庫 こ32-70 警察小説アンソロジー
出版社名 文藝春秋
出版年月 2024年6月
ISBNコード 978-4-16-792230-6
税込価格 880円
頁数・縦 376P 16cm
人気シリーズのスピンオフから、文庫オリジナルの書下ろし作品まで...。大注目の作家たちが送る豪華警察アンソロジー。
佐々木譲・乃南アサ・今野敏といった手練れの中で、知らない方が二名。
こういったアンソロジーの楽しいところは、初めての作家さんの他の作品を読んでみたいと思えることだ。
冒頭、佐々木譲【弁解すれば】
さすが佐々木譲、面白い。PTSDで休職中だった刑事がようやく復帰。
だが。つい関係者に気持ちを入れすぎる性格はなかなか変えられず、苦労している。
しかし一人の男の窮状を救うことにより、自信を持つようになるのか?
乃南アサ【青い背広で】は、60年安保の年。
デモをしている大学生と同じ年の若いお巡りさんが主人公。張り切りボーイが思いがけず抜擢を受け、新しい職場で手柄を挙げるという話。
ちょっと出来すぎる話だったが、話の中に登場する「青い背広」という歌謡曲を、懐かしく思いだした。
東京オリンピックに向けて、日本が大きく変わろうとしている頃だった。
次の松嶋智左というのは、初めての作家さん。略歴を見ると、もと刑事だとか。しかも白バイ乗り。
【刑事ヤギノメ】は、タイトルだけでは「ヤギノメさん」というのかと思ったが、文字通り「ヤギの目」を持つ刑事という意味だった。
ヤギの目は、丸くならずに横に開くのだとか。それで一瞬にしてたくさんのものを観ることが出来る。
白バイ乗りが仕事に専念していない理由というのが面白かった。なるほど!
大山誠一郎【三十年目の自首】は、「赤い博物館」もの。前回読んだものよりは、すこし時が経っているようだ。
双子を使うミステリはずるい、とか言うが(?)、今回はそれ。あまり目新しくはなかった。
長岡弘樹の【噛みついた沼】は、カミツキカメ登場という設定が、あまり好みではなかった。
しかしこの夫、妻に何も言わない。
百目鬼という婦警が登場するが、この人の出る作品がほかにもあるのかな?かなり面白いキャラだ。
櫛木理宇という作家さんも、初めてだ。【ルームシェア警視の事件簿】では、キャリア組で(今どき)地方警察の署長職である27歳の一海は、平日は官舎で過ごし、週末になると実家に帰ってくる。
そこにいるのは、血のつながりのない兄妹で、彼らはルームシェアをして暮らしているという設定。
今野敏【ケースオフィサー】
上司のちょっとした言葉を誤解して、捜査畑から来た同僚をかなり意識する公安刑事の空回りがおかしかった。
これまた、さすが今野敏。
初めての作家さんもあったが、まさに「今をときめく警察小説の書き手」ばかりで、こういう本は実に面白い。
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