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2025.01.04

帚木蓬生【花散る里の病棟】

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新潮文庫 は-7-32
帚木蓬生/著
出版社名 新潮社
出版年月 2024年11月
ISBNコード 978-4-10-118832-4
(4-10-118832-7)
税込価格 880円

町医者こそが医師という職業の集大成なのだ――。時代の荒波を越え、地域に根ざし、つねに患者と共に戦い、涙し、喜ぶ開業医の心とは。病と命の現場に真摯に向き合う姿を抒情豊かに描きだして感動を呼ぶ百年の物語。

 

大正時代、「虫医者」として頼りにされた初代 保造。軍医として戦線を彷徨った二代目 宏一。地元で内科医院を開いた三代目 伸二。先端医療に取り組む外科医として、パンデミックに直面した四代目 健。野北家4代の物語。

それぞれの時代を行きつ戻りつ、4代に渡る町医者の遭遇した患者たちとの話が綴られている。

 

中でも二代目宏一の【兵站病院】が、フィリピンルソン島での壮烈な様子を伝えていてすさまじかった。
戦況が日々芳しくなっていく中、米軍の空爆を受けて逃げ惑う兵士たち。負傷して役に立たなくなった兵士に対し、上部は安楽死を指示する。そうではあっても殺人であることには変わりなく、その体験は宏一を生涯苦しめていた。

それでも敢えて幸運だったと思うのは、8月15日の敗戦をその日の内に知ることが出来たことだろうか。

 

三代目伸二が患者である元看護師から聞いた話【胎を堕ろす】にも、戦慄を覚えた。
大陸からに引揚げ中に犯されて妊娠した女性たちへの、国の方針としての堕胎手術のこと。

「国家というものはどのような時代であれ、詰まるところ国民に対する姿勢は変わらないのではないか?」との解説 佐野史郎氏の言葉が突き刺さってくる。

他にも記録しておきたい話ばかりだが、それはまた別記事にて。

 

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