古内一絵【東京ハイダウェイ】
古内一絵/著
出版社名 集英社
出版年月 2024年5月
ISBNコード 978-4-08-771868-3
(4-08-771868-9)
税込価格 1,980円
ようこそ、心休まる「隠れ家」へ。
ホッと一息つきたいあなたに届ける、都会に生きる人々が抱える心の傷と再生を描いた6つの物語
冒頭作【星空のキャッチボール】では、愚直に「真面目な働き方」をしている桐人は、何事もそつのない直人に馬鹿にされ、昼休みにプラネタリウムにたどり着く。
普段黙々とただ仕事をしている璃子が入っていくのを見かけたからだ。
「プラネタリウムで寝ていると、逢いたい人に会える」と璃子は言う。
プラネタリウムという思いがけない「ハイダウエイ」を見つけて、読んでいる方もホッと出来た。
長いこと、プラネタリウムには行ってないなぁ。あの、夕暮れの景色から「月」を消し、次第に暗くなってやがて星空がドームいっぱいになっていった時の驚きは、今も覚えている。
璃子に、桐人の仕事のリピーターは徐々に増えていると言われてやや自信を取り戻した桐人だった。
こうした単発の短編集かと思いきや、連作ものだった。
二作目【森の箱舟】でも直人は登場し、自信満々に色々な場を仕切る。
今回は、彼らの上司にあたる恵理子。中間管理職という難しい立場にいる彼女は、実は家計を支えている。
夫は家事は得意だがのんびりした性格で、忙しすぎる職場に疲弊していたのだ。
これまでの常識(?)と逆な立場で働く恵理子は、その「常識」に振り回される。
「お弁当はお母さんがつくるもの」と保育園児の次男にまで言われるありさま。
ここで登場する夫には腹が立つ。
しかも夫と義母が、次男に「お母さんは次男のことを手抜きしている」とまで言われて切れてしまう。帝王切開したことも、「普通」でないと思われているのだ。
そんな思いのまま、一日会社をさぼって赴いた場所で、恵理子は「第五福竜丸」に出会う。
あの被爆した船がこんな形で保存されていたとは、知らなかった。
当時は随分騒がれたものだが。
と、同じような話が続くが、やがて実直な働きが実を結び……という結構ハッピーエンド的な話だった。
最後に璃子の話もあり、ふたりの距離も徐々に近づいていくようだ。
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