« 中山七里【ヒポクラテスの誓い】 | トップページ | ドクターイエロー、ラストラン 「ありがとう」の声に見送られ引退 »

2025.01.29

菰野江名【さいわい住むと人のいう】

Photo_20250129224901

菰野江名/著 
出版社名 ポプラ社
出版年月 2024年9月
ISBNコード 978-4-591-18296-3
(4-591-18296-7)
税込価格 1,870円

ある日、豪邸に住む高齢の姉妹が二人とも亡くなった。
老姉妹は、なぜこんな豪邸に二人だけで住んでいたのか―?

地域福祉課に異動になった青年・青葉が紹介されたのは、大きな屋敷に住む八〇歳の老女・香坂桐子だった。桐子は元教師で顔が広く、教育から身を引いてからも町の人から頼りにされていた。妹の百合子と二人だけで暮らしているという――。

 

2024年から20年ずつ逆算して、姉妹とその関係者の話を追っていく。

冒頭は二人の死が描かれているが、その次、20年前に登場するのは、夫のDVから逃れてきた女性とその息子。
独立した話のようでいて、それらは後に繋がってくる。

地域福祉課の青葉は、赴任後初めて訪れた姉妹宅で、二階の部屋から庭の桜を眺める。
その桜の樹は、姉妹の姉のほう桐子の教え子が、新築祝いに贈ってくれたものだった。
桜に、なぜか懐かしさを覚える青葉。彼の下の名前は、敢えて書かれていないのだろう。

姉妹は戦災孤児で、親類中をたらい回しにされて育った。
いつか二人で暮らすことが、姉妹の目標になる。

桐子はそのために勉強して大学へ進学し、教師になる。
妹の百合子は、世話になった家の息子と結婚させられる。

「いつか妹を救って一緒に住む」というのが桐子の必死の思いだったのだが……。

お互い相手を気づかっているようで、微妙にすれ違いがある。
そのあたりの描き方がうまいと思う。

自分と同世代の姉妹のような境遇の子は、形は違えど周りにもいた。

 

|

« 中山七里【ヒポクラテスの誓い】 | トップページ | ドクターイエロー、ラストラン 「ありがとう」の声に見送られ引退 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 中山七里【ヒポクラテスの誓い】 | トップページ | ドクターイエロー、ラストラン 「ありがとう」の声に見送られ引退 »