菰野江名【さいわい住むと人のいう】
菰野江名/著
出版社名 ポプラ社
出版年月 2024年9月
ISBNコード 978-4-591-18296-3
(4-591-18296-7)
税込価格 1,870円
ある日、豪邸に住む高齢の姉妹が二人とも亡くなった。
老姉妹は、なぜこんな豪邸に二人だけで住んでいたのか―?
地域福祉課に異動になった青年・青葉が紹介されたのは、大きな屋敷に住む八〇歳の老女・香坂桐子だった。桐子は元教師で顔が広く、教育から身を引いてからも町の人から頼りにされていた。妹の百合子と二人だけで暮らしているという――。
2024年から20年ずつ逆算して、姉妹とその関係者の話を追っていく。
冒頭は二人の死が描かれているが、その次、20年前に登場するのは、夫のDVから逃れてきた女性とその息子。
独立した話のようでいて、それらは後に繋がってくる。
地域福祉課の青葉は、赴任後初めて訪れた姉妹宅で、二階の部屋から庭の桜を眺める。
その桜の樹は、姉妹の姉のほう桐子の教え子が、新築祝いに贈ってくれたものだった。
桜に、なぜか懐かしさを覚える青葉。彼の下の名前は、敢えて書かれていないのだろう。
姉妹は戦災孤児で、親類中をたらい回しにされて育った。
いつか二人で暮らすことが、姉妹の目標になる。
桐子はそのために勉強して大学へ進学し、教師になる。
妹の百合子は、世話になった家の息子と結婚させられる。
「いつか妹を救って一緒に住む」というのが桐子の必死の思いだったのだが……。
お互い相手を気づかっているようで、微妙にすれ違いがある。
そのあたりの描き方がうまいと思う。
自分と同世代の姉妹のような境遇の子は、形は違えど周りにもいた。
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