原田ひ香【まずはこれ食べて】
池内胡雪は多忙なベンチャー企業で働く三十歳。不規則な生活で食事はおろそかになり、社内も散らかり放題で殺伐とした雰囲気だ。そんな状況を改善しようと、社長は会社に家政婦を雇うことに。やってきた家政婦の筧みのりは無愛想だったが、いつも心がほっとするご飯を作ってくれて――。現代社会の疲れを癒す、美味しい連作短編集。
実は再読だったと、最後の1章でやっと気づいた。
学生時代から連れ立っていた5人で起業したベンチャー企業。
それから7年が経ち、社内には何となくけだるい雰囲気が漂うようになった。
そんな時、CEOの田中優一郎が家政婦を雇うことを提案。
メンバーの伊丹大悟(営業担当)・桃田(ITに強く山登りが好き)と、主に事務担当の胡雪は、全面的にではないものの賛成する。
もう一人、いつもアイデアを出してこの会社の基礎作りをしたような柿谷がいるが、彼は現在行方不明だ。
そしてやってきたのが、筧みのり。
マンションの一室である事務所は次第に綺麗になっていく。
何よりも、彼女の料理が美味しいのだ。
物語は、1章ずつ彼らが主役になっていくという連作短編集の形を取っている。
それぞれ疲れて帰ってきた彼らに対する筧の第一声が「まずはこれ食べて」だ。
そうしたエピソードで、彼らの苦悩も語られていくのだが、順調に延ばしてきたとはいえ小さな会社だ。
30歳になり、こもごも考え方も変わってきている。
その中で、柿谷の不在が時々話題に出て、ある日妹だという女性が、彼が北海道で目撃されているという情報を伝えてくる。
そこから物語が動き出すのだが、この柿谷という人物がとんでもない見下げた男だった。
そしてエピローグでは、思いもかけない真相が語られる。
内容は暗い面も多いのだが、出される料理が美味しそうで、その嫌な気分をほぼ払拭させてくれる(かな?)。
自分にとっては、最後の柿谷の項で、それまでのほのぼのした気持ちが一挙にダウンしてしまった。
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