中山七里【アポロンの嘲笑】
集英社文庫 な65-1
中山七里/著
出版社名 集英社
出版年月 2017年11月
ISBNコード 978-4-08-745661-5
(4-08-745661-7)
税込価格 990円
東日本大震災直後に起きた殺人事件。原発作業員として働いていた被害者と加害者の間に何があったのか? 怒涛の社会派サスペンス!
2011年3月
東北大地震は、単に地震の被害だけでなく、襲ってきた津波、その後の原発事故へと悲惨な爪痕を残した。
後半、加勢が直面する地震の爪痕は、まさに壮絶なものだった。
自然災害だけでないこの災害についての新たな発見は、とても自分などには書けないものだった。
こんなことが事実だったのなら、今すぐにでも行動を起こしたいと思いながらも、流されていく毎日である。
この年の16年前、阪神淡路大震災で生活が狂ってしまった家族と一人の孤児は、この福島県で相まみえる。
家族4人、原発に勤める主と妻、息子と娘。
息子の純一は恋人の元の男に絡まれ、彼を殺してしまう。やむを得ない犯行だったのだが、出所してからの近所の目は、過酷なものだった。
妹の裕未は職場で嫌がらせを受け、家族は近所から爪弾きされる。
一方、地震で父母を失った加瀬も、その後は実に過酷な少年時代を送ってきた。
高校卒業後、職場として連れてこられたのが、原発の作業場だった。
孤独な彼に声をかけてくれたのが、やはり原発で働くようになった純一だった。
加瀬と純一たち金城一家との交流は、つかの間のオアシスのようなものだった。加瀬と祐未との仲も接近していったのだが……
それがあるきっかけで、加瀬は純一を殺してしまう。
刑事の仁科は震災で息子が行方不明のまま、人手不足の職場で日々頑張っている。
仁科が加瀬を警察署へ護送する途中で地震がおき、それに乗じた加瀬は逃亡してしまう。
ここからは加瀬と仁科の、追うもの、追われるものの攻防となる。加瀬が目指しているのは、原発作業場のようなのだ。
その間、公安からの不振な介入もあったりして、物語後半では息をもつかせぬ、となるのだが、正直少々冗長な場面が続き、読み続けるのに体力が必要だった。
最後に判明する真犯人だが、うーん、こういう引っ張りかたをするか、と、唐突な感を抱いてしまった。
人間は太陽をこえるエネルギーを開発したが、一歩誤るととんでもないしっぺ返しを喰う。
地震後の惨状を次々と目の当たりにした加瀬が、「アポロン(太陽神)が嘲笑している」と感じたのも、宜なるかな。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 読書日記:9月11日(2026.09.11)
- 有栖川有栖【インド倶楽部の謎 国名シリーズ】(2026.09.03)
- 8月の読書メーター(2026.09.02)
- 久我真樹【『名探偵ポワロ』完全ガイド】(2026.08.30)
- ぴあMOOK【中国ドラマが好き!いま見るべきスター最前線】(2026.08.27)




コメント