光原百合【十八の夏】
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【日本推理作家協会賞(第55回)】ある日の川べりでの出会いから信也と紅美子の不思議な交流が始まる…。第55回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作ほか全4作のミステリー。寡作家の著者が満を持して送り出す癒しの物語。
やはり、表題作の「十八の夏」がいい。
冒頭、橋から見える風景。
三浦信也は、橋の手すりから河原をのぞく。いつもの風景。一人の女性が、河原で絵を描いている。
やがてふとしたことから口をきくようになり、予備校生になったばかりの信也は、その女性蘇芳紅美子の住むアパートの空き部屋を勉強部屋にする。
なにもかもが、偶然のようでいて、なにもかもが、わかっていたことだった。
だが、信也は父親に似ているのだ。この寡黙だが実によくできた人物と同じような大人に、信也も成長していくことだろう。やや出来すぎの感はあるが。
母親と姉の俗物ぶり?がちょっとデフォルメされているようでもある。
この作品のテーマは、【朝顔】。だが、桜の季節からほんの少ししか経っていないののに、朝顔の双葉が出てくるのは少しおかしい気もするが。
キンモクセイをテーマにした二つ目の「ささやかな奇跡」は、保育園児の長男を残された男やもめの話だ。
書店に勤める彼は、街の小さな本屋の主明日香と知り合い、やがて……
妻を亡くして、東京から大阪へ超してきた親子だが、息子太郎はすぐに関西弁を使いこなし、タイガースファンになる。
その太郎がキューピッドになって、話はハッピーエンドとなる。
後押ししてくれる大家さん親子も、血の繋がらない母と子だった。
三つ目は、少々箍が外れた演劇青年とその弟の物語。兄が勘違いして、弟の恩師の「娘さん」を恋してしまった。ややドタバタ気味ではあるが、心温まる物語。
テーマは、ヘリオトロープ。
キョウチクトウが持つ毒が主要な役割を果たす「インセント・デイズ」は、救いのない話だ。
これは、親本の表紙。
こちらの方が、良い感じだと思うのだが。
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