2024.04.22

【土曜はカフェ・チボリで】

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著者:内山純
価格:858円
カテゴリ:一般
発売日:2022/03/19
出版社: 東京創元社
レーベル: 創元推理文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-488-48013-4

風変わりな店主・レンが優雅な仕種でマッチを擦ると、謎はたちまち解かれていく。忙しない日常にひと時の安らぎをもたらす、安楽椅子探偵譚。

 

【第一話 マッチ擦りの少女】では、主人公香衣がフトしたことでカフェ・チボリを訪れるところから始まる。

そのカフェの店員のしぐさが、こういったちょっと変わったカフェの物語によくある少々浮世離れした接客で、少々ウンザリして途中で読むのを止めようかと思った。

ところがその内、奇妙な魅力を感じて最後まで読んでしまった。

香衣はオープンしたばかりの一番目の客ということで、その後も主の印象に残ることになる。
香衣が店に来るきっかけになった客と、これまた偶然訪れた元大学教員は、毎週土曜日にはカフェに通うことになる。
この不思議なカフェは、土曜日しかオープンしないのだった。

以下の収録作から判るように、アンデルセンの童話を元にして、ちょっとした謎を仕掛けてある。
それを客たちが推理し合い、最後は店主が解くという趣向である。

贅沢な食器、値打ちのある調度、それに何より考えられない立地と、まずは現実的ではない設定だったが、結構楽しかった。

【第二話 きれいなあひるの子】

【第三話 アンデルセンのお姫様】

【第四話 カイと雪の女王】

最後に、レンが大きな思い違いしていたのが解かれたのに救われた。

 

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2024.04.20

柚月裕子【風に立つ】

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著者:柚月裕子
価格:1,980円
カテゴリ:一般
発売日:2024/01/10
出版社: 中央公論新社
利用対象:一般
ISBN:978-4-12-005728-1

岩手・盛岡を舞台に、揺れ動く心の機微を掬いとる、著者会心の新たな代表作!

 

悟の父孝雄は、突然補導委託を始めると言った。

自分に対するこれまでの孝雄の態度に疑問を持っている悟は、納得いかなくて自分は圏外にいようと決心する。

しかし一緒に仕事をし暮らしているからには、そういうわけにもいかず、いやが上にもその少年と関わっていくことになる。

物語の芯は少年の成長にあるが、同時に悟と父親との関係性の変化にもある。

この悟の気持ちはよく解る。

親は、自分がしてきた苦労を子どもにさせまいとして、過剰な干渉をする。
子どもは、自分なりに考えていることがあるのに。

この孝雄の場合は、子どもとの向き合い方がつかめずに、素っ気ない態度を取っていたのだろう。
悟には、それが物足りなかった。補ってくれる存在である母がいないだけに、なかなか解りあえなかった。

お互い不器用でも、いい方向性を見つけられてよかった。

 

物語の主筋とは別に、南部鉄器の素晴らしさもわかった。
ただ重いので、最近は敬遠している。鉄瓶も処分した。

 

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2024.04.18

太田忠司【名古屋駅西 喫茶ユトリロ】

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著者:太田忠司
価格:726円
カテゴリ:一般
発売日:2023/04/14
出版社: 角川春樹事務所
レーベル: ハルキ文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-7584-4554-2

名古屋めしの魅力が満載の連作ミステリー。

 

シリーズもの。

「ユトリロ」とは、喫茶店に飾ってある名画。喫茶店名の由来でもある。

龍は東京生まれの東京育ちではあるが、名大の医学部に合格して、名古屋で父の実家に下宿している。
名古屋には殆ど縁が無かったが、少しずつ「名古屋めし」にも馴染んでいく。

その龍が、店の常連たちから聞かされたちょっとした謎を解くという話。
ではあっても、実は大学の先輩麻衣の力が大きい。

その「名古屋めし」は、「手羽先唐揚げ」「カレーうどん」「海老フライ」「寿がきやラーメン」「鬼まんじゅう」「味噌おでん」など。
解く謎も、「ピンポンダッシュ」であったり街中での「ドッキリ撮影」など。

実際に麻衣に相談している内に、龍は麻衣にほのかな思いを抱くようになるのだったが……。

名古屋を舞台にした話に、あまり外れはない。

今回も名古屋弁が、楽しかった。でもいつも思うのだが、まったく名古屋弁を知らない人には判りにくいだろうなぁ。
龍の数少ない友人、駿がいい味を出している。

二巻目を購入したのは、言うまでもない。

表紙カバーは、あまり好きになれない。

 

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2024.04.16

長尾幹也【解雇告ぐる日】

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著者:長尾幹也
価格:1,650円
カテゴリ:一般
発行年月:2000.6
出版社: かもがわ出版
利用対象:一般
ISBN:4-87699-523-0

勤め人であれば誰もが感じる鬱積した心を三十一文字の詩情に託し、仕事と人生の狭間にある情念を鋭く切りとったサラリーマン必読の哀歌集。

 

5年ほど前から他系統萎縮症で病床にあったのだったが、66歳でのご逝去は早すぎる。
晩年の歌は、視線入力機器を使ったの作歌だったよし。

あらためて、本書を読み直す。

やはり、「解雇告ぐる日」の歌が切ない。

 

妻は泣きわれは視線に文字を打つ午後の病室蝶も鳩も来ず

これは本書とは関係ない、最後の投稿歌である。

 

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【解雇告ぐる日】(10.08.26)

 

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2024.04.14

中山七里【総理にされた男】

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著者:中山七里
価格:880円
取扱開始日:2022/03/04
出版社: NHK出版
ISBN:452-8-18-972772-4

予測不能な圧巻の展開と、読後の爽快感がたまらない、魅力満載の一冊。

 

結構怖い話が多いので、最近敬遠気味だった著者だったが……。

これが、非常に面白かった。

加納眞策は、売れない劇団俳優。
顔や姿が現在の総理大臣真垣統一郎とそっくりなことから、上映劇の前座として真垣の真似をして、それが受けている。

住まいを追い出されて、今は恋人の家に転がり込んでいる。

ある日家を出た途端、眞策は二人の男に拉致されて、連れて行かれたのは総理官邸。
総理の健康状態が非常に悪い状態なので、「替え玉」にされたのだ。

向かう敵は野党や官僚だけでなく、同じ党にもいる。

眞策はそれらの危機をうまく乗り越えて行ったのだが……。

一方恋人は帰ってこない眞策を案じて、捜索願を出す。

眞策の古い友人や、捜査をしてくれる警察官などを巻き込みながら、話はどんどん進んでいく。

国会の答弁なども面白かったが、最後は、非常にいい終わり方をした。

著者の作品からは、ちょっと想像できなかったな。

 

 

 

 

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2024.04.08

小野寺史宣【それ自体が奇跡】

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著者:小野寺史宣
価格:726円
カテゴリ:一般
発売日:2020/05/15
出版社: 講談社
レーベル: 講談社文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-06-519660-1

百貨店で働く貢と綾は結婚三年目。結婚三年目にして初めて訪れる大きな危機を、2人は乗り越えられるのか!?

 

貢と綾は、同じ百貨店で働く夫婦。

この話は、年に一度だけ公休日である元旦から始まって、次の年の元旦で終わる、一年間の物語。

貢はサッカーが好きで、職場のチームにも所属していた。
一方綾はサッカーは全然判らず、貢の試合にも行ったことがない。

その職場のチームが、無くなった。

だが貢は、社会人チーム(というのかなぁ?)から声を掛けられ、そのチームに入った。プロではないが、Jリーグを狙っているチームだという。
綾はチーム入りを決めてから告げられたということもあって、反対である。

一年だけという約束で始まったのだったが……

貢は婦人服売り場、綾は紳士服売り場に配属されている。

その職場での人間関係や、お客との関係などを、奇数月は貢が、偶数月は綾が語る形で進行する。

途中、二人とも少しだけ危ういことになりそうという挿話も入ってくる。

所属は違っても同じ職場というのは、色々大変そうだ。
配偶者のことを、直接ではなく他人を介して聞くこともある。

それでも、年末にはお互いかなり理解し合えるところまで回復してよかった。

本書は「夫婦三部作」の最終だという。後の二冊も読んでみよう。

 

表紙絵の貢が、ちょっとなよっとしているのが気になる。

 

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2024.04.06

森絵都【カラフル】

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著者:森絵都
価格:715円
カテゴリ:一般
発売日:2007/09/04
出版社: 文藝春秋
レーベル: 文春文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-16-774101-3

老若男女に読み継がれる、不朽の名作。

 

この「生前の罪」というのが、キーポイント。もしかしたら、というのが当たっていた。

自殺した男の子の体に入り込んで、自分の罪を思い出す必要のある「ぼく」。

死の間際だった息子が生き返ったと喜ぶ、家族。

しかし「ぼく」は、かなりシビアに両親を観察している。
いじわるな兄が時折見せるやさしさのようなものに救われる。

 

解説の阿川佐和子さんが、映画で母親役をなさっていたという。父親役は、滝田栄さんだったようだ。

 

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2024.04.04

小野寺史宣【縁】

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著者:小野寺史宣
価格:748円
カテゴリ:一般
発売日:2021/09/15
出版社: 講談社
レーベル: 講談社文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-06-524968-0

嫌なことがあったなら、良いことだってきっとある。
見知らぬ人との予期せぬ「つながり」が、あたたかな奇跡を紡ぎ出す!
本屋大賞第2位! 『ひと』の著者が描く傑作群像劇!

 

各短編のタイトルがすべて「i」で終わっている。

【霧-KIRIー】
【塵ーCHIRIー】
【針ーHARI】
【縁ーHERI】
【終ーOWARI】

そしてタイトル【縁】は【YUKARI】と読ませている。

一篇ずつは独立した短編なのだが、登場人物たちはそれぞれどこかで繋がっている。

その中では、冒頭【霧ーKIRIー】の室屋が好きかな。

嫌な人物だったなぁと思った真波も、最後は素直に室屋の店に行ったみたいだし、人は変われる。

しかし結婚したカップルの殆どが離婚してしまったというのは、どういうことだろう?
単に昨今はごく短絡的に、離婚に走るのかもしれない。

ある短編で関わっている二人の一方の方が他の短編で登場したとき。
先の短編での会話が繰り返されるのは、正直あまり好みではない。
しかし、思い出せていいのかもしれない。が、忘れるほど放置して続きを読みはしないし。

いつもの著者とはちょっとばかり違った、でもやはり小野寺さんらしい話だった。


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【ひと】(24.01.22)

【まち】(24.03.26)

 

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2024.04.03

気になる本:一瞬で数字をつかむ!「概算・暗算」トレーニング

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暗算力が落ちている。以前は一瞬で計算できたことが、残念ながら「答を暗算で出そう」という気力が失われている。

そこで、「概算」??  ついでに暗算力も取り戻せれば言うことなし。

と、レビューを見ながら思案中。

 

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2024.04.02

村田沙耶香【コンビニ人間】

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著者:村田沙耶香
価格:660円
カテゴリ:一般
発売日:2018/09/04
出版社: 文藝春秋
レーベル: 文春文庫
利用対象:一般
ISBN:978-4-16-791130-0

「普通」とは何か?
世界各国でベストセラーの話題の書。

 

芥川賞受賞の時から、やや気になっていた。
表題からは、「コンビニ依存症の人」を想定していたのだったが……。

バカに面白い、この女の子(って、もう36歳なのだが)。

語り手の「私」恵子は、いわゆる「ふつう」の子ではなかった。
父母は悩み、何とか「直そう」としてきた。

そんな、世間ではなかなか受け入れて貰えない、一種の「コミュ障」である恵子も、今はコンビニ店員としてそつなく過ごしている。
しかし周りは、36歳まで何故結婚もせずバイト生活なのかと、訝しがってはいる。

しかしこの恵子、マニュアル通りに客と接しているだけなのだが、決してそうではない。
周囲の音には敏感に反応出来るし、相手が不快にならない程度に観察して次の動作に繋げている。

途中、白羽という、それこそ変わった人物が登場することによって、恵子の暮らしも変わっていく。
この白羽と関わっていた時間が、何だかもったいないような気になってしまうが。

最後に恵子は、コンビニの仕事が天職だと覚る。

という展開だったが、恵子はよくやっていると思う。
しかし、余計なお世話だが、食事内容が少々心配ではある。

 

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