2025.05.20

長月天音【ほどなく、お別れです】

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小学館文庫 な38-1
長月天音/著 
出版社名 小学館
出版年月 2022年7月
ISBNコード 978-4-09-407163-4
(4-09-407163-6)
税込価格 726円

大学生の清水美空は、東京スカイツリーの近くにある葬儀場「坂東会館」でアルバイトをしている。

社長の板東は美空の父の友だちで、その関係でバイトを始めたのだったが。
事務方の陽子や、キリッとした社員の漆原などが登場。この漆原という人は若いらしいのだが、何だか達観した風情がある。

そして美空が漆原や僧侶の里見と出会うのは、いずれも訳ありの故人ばかり。

焼身自殺した息子を見送る老夫婦。
お腹の子もろとも、歩道橋から落ちて亡くなった妊婦。残された夫の哀しみ。
学齢前の幼女の死を、親、特に母親はなかなか受け入れられない。
指を噛み切って自殺した若い女性もいる。

そんな現場にいて、美空は葬儀とは亡くなった人のためというよりは、身内のための場だと悟る。

実は美空には「気」を感じる力があって、それは僧侶の里見も同じである。
漆原は感じることはできないが、この二人の感じ方から、もっとも相応しい接し方をしている。

また美空は、空になった食器を見るたびに、生きている人はどんな時でも食べなくてはいかないということを感じる。

美空自身、生まれる前に亡くなった姉がおり、時折姉の気配を感じている。
そして最愛の祖母も、その姉に付き添われて旅立っていった。

シリーズもののようだ。

葬儀場を経営している女性が主人公の本もよかったが、こちらはまた違った重みがあった。

 

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2025.05.18

【心と頭がすっきり片付く バレットジャーナル活用ブック】

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平和堂/監修 
出版社名 法研
出版年月 2020年7月
ISBNコード 978-4-86513-721-7
(4-86513-721-1)
税込価格 1,650円

好きなノートを使って自由にカスタマイズできる手帳術、バレットジャーナルを活用して生活をより豊かに、いきいきとさせるためのヒントが見つかる本。

 

前回書いた「ノートが固まりつつある」の指針になったもの。
これまでも色々バレットジャーナル関係の本を読んできたが、本書が一番単純で解りやすかったかな。

バレットジャーナル発案者のライダー・キャロルは、自身ADDだったという。ADHDから多動性を抜いたもの。
その為色々苦労なさったようだ。

バレットジャーナルと相性のいいロオイヒトトゥルム1917も試したことがあるが(これはページが入っていてその点は非常に評価できる)、何故か書きづらくて長続きしなかった。
今はID・PWの管理用に使っている1冊だけが使用中ノートとしては残っている。
あと、表紙の色が気に入った未使用のものと。

さてバレットジャーナルだが、「バレット」とは「・」すなわちマークのこと。この「・」がメインになるが、「ToDoリスト」にはどうしてもチェックボックスを使いたくて、それも踏み切れない理由になっていた。

その「・」がついたタスクを幾つかの種類別に整理して、次の日のタスクに落とし込む。そのマークにも、馴染めなかったから。

もう一つ、最初に一年のフォーチャーログにページを割いたり、マンスリーログを毎月作ったり、というのもハードルが高い。
インデックス用に4ページほど割くのも、それで収まるのか、あるいは余るかもしれないという懸念が生じる。
元々インデックスは後ろのページから順に作っていて、この方法は自分では気に入っている。

とかなんとか色々ケチをつけているが、それでも毎日のことを細大漏らさずとまではいかなくても、できるだけ残しておきたいと思い、再々再?挑戦となっている。

それから、あとから解りやすいように、ログの前には色別の「ドット」を付けたりしている。

と、本の感想と言うよりも自分流の使い方をツラツラ並べてしまった。

自分のノートについては、別記事で後日書いておこう。

関連記事

「ノート」が固まりつつある(25.05.17)

 

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2025.05.16

松嶋智左【県警本部捜査一課R】

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徳間文庫 ま25-1
松嶋智左/著 
出版社名 徳間書店
出版年月 2025年2月
ISBNコード 978-4-19-894996-9
(4-19-894996-4)
税込価格 880円

「推し活」刑事、爆誕
「女副署長」で人気の警察小説の旗手
前代未聞の新シリーズ始動!

著者は、元警察官だ。白バイ隊員だったという。
アンソロジーで短編を読んで、一度著者の本を読みたいと思っていた。

警察は男社会だ。そんな中でも少しずつ男女機会均等が進んできて、今回の主人公玲は、県警捜査一課で班長を任されている。
その班には個性的な刑事が多く、これまでの班長は長続きしなかったらしい。

さてそんな玲は、フィギュアスケーターの蒼の推し活をしている。事件をさっさと片づけて試合やショーを見に行きたいため、事件の解決に全力を挙げているのだ。

本書は3篇の中編からなっていて、自ら捜査に赴くのは勿論、部下たちの優れた働きで素早い解決を見ている。

女性目線という言葉は好きではないが、これまでの刑事ものとは、やはりニュアンスが違うのも面白かった。

 

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2025.05.14

佐々木譲【密売人】

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新装版
ハルキ文庫 さ9-18
佐々木譲/著 
出版社名 角川春樹事務所
出版年月 2025年5月
ISBNコード 978-4-7584-4719-5
(4-7584-4719-5)
税込価格 814円

十月下旬の北海道で、ほぼ同時期に三つの死体が発見された。函館で転落死体、釧路で溺死体、小樽で焼死体。それぞれ事件性があると判断され、津久井卓は小樽の事件を追っていた。

 

佐々木譲は、読み始めたら止まらない。いや、止められない。
今回も一気読みだった。

プロローグで、三つの事件が描かれる。
佐伯と新宮・津久井・小島百合は、それぞれの事件を調べ始める。(小島が気になっている「誘拐事件?」は、単に彼女の勘によるものだが)

本編に入ると、この三つの事件が代わる代わる描かれていき、物語が進行していく。

佐伯ら4人がたまにするランチタイムで、お互いの事件の話が出てきて、その関連性が浮き彫りになっていく。

道警シリーズ5篇目になるのか。
いまだ、佐伯も津久井も、懲罰人事のあおりを受けている。

だが津久井は準レギュラーの長正寺によって、ようやく機動捜査隊へ加われそうだ。
そして佐伯も、その優秀さを上司も認めざるを得ない。

彼らの矜持と対照的な、腐った警官たちもいて、「やはりなー」と思ってしまうが……。

 

今回、佐伯と小島の距離が少し縮まったような。

 

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2025.05.13

【週間ベースボール 5月12日号】

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W.B.SPECIAL
ダルビッシュ有特集
野球界発展へ道標を示すレジェンド
独占特別インタビュー
未来へ――可能性は無限大
~日本野球の発展を目指し~
ダルビッシュ有[パドレス/投手]

Twitterで「ようやく手に入れた」というツイートを見つけた。
次週号(5月19日号)が既に発行済みなので、本屋にはほぼ無いらしいということのようだ。

Amazonを見に行くとあったので、即ポチッとする。
実はこれは、息子へのプレゼント。母の日なのにーー。

特集といってもせいぜい4・5ページくらいのが多い中で、本書はかなりのページを裂いている。

とはいってもダルさんについて自分が知っていることは少ない。
(奥さまの)聖子さんのブログを通じて知った「夫」「パパ」としての姿を捉えているだけだ。
そして、そうした家族への姿勢を非常に好ましく思っている。
勿論自身や聖子さんの両親のサポートあっての家庭だろうが。なにしろ、5人の子持ちなのだ。

一選手としてだけでなく、多くの後輩たちが尊敬している存在感。
23年のWBCでの貢献度は、まだ記憶に新しい。

また、自身の技術を惜しむことなく後輩たちに伝授している姿勢にも、好感が持てる。
そしてアメリカ式の技術重視の方法だけでなく、日本式の経験に基づいた指導も評価していること。
この二つが融合することによって、日本の野球はもっとよくなると断言している。

まだまだ活躍して欲しい。

 

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2025.05.12

mone【好きを詰め込んで手帳時間を楽しく! バレットジャーナル活用術】

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mone/著 
出版社名 エムディエヌコーポレーション
出版年月 2022年3月
ISBNコード 978-4-295-20222-6
(4-295-20222-3)
税込価格 1,430円

記録をすることで自分が見え、同時に明日への元気やヒント、手帳タイムを充実させるアイデアが満載です!

 

著者の動画が人気らしい。

定番の【バレットジャーナル 人生を変えるノート術】は方法論だが、こちらは実践版。

「家計簿ページ」や「ワードローブページ」など色々興味深い使い方もあったが、色んな方の事例集ではなく著者の使い方なので、手帳が一種類なのが、ちょっと残念だった。(自分とは違う種類だったので)

あと「捨てるノート」というのが面白かった。
何でもかんでも思いついたことを書き殴る、いわば「メモ帳」感覚だろうか。

あと、楽しむためのグッズの紹介もあったが、自分にはあまり参考にならなかった。
何しろ、貼り付けたりして手帳が膨らむのは好きではないので。

 

 

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2025.05.11

【銀座「四宝堂」文房具店5】

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冒頭作【ものさし】が良かった。

ものさしと定規のちがいについては、恥ずかしながら知らなかった。
そう言えば我が家にも、木製の30CM「定規?」はあるが、メモリ外の空白もある。

もう一つ方眼直定規もあって、こちらはアクリル製。短編にもメモリがあり、反対側はスチール製でカッティングにも大丈夫だ。

子どもの頃使っていた竹製で本物の?「ものさし」はどうしたろう?
母が持っていた鯨尺も、覚えている。あれは何と言ったっけ?「裁ち台?」。
鏝ももあったなぁ。

と、本書のこととはどんどん離れていくが、中学生三人と店主とのやりとりも楽しかった。

内容については、また書きたいと思う。

 

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2025.05.10

青山美智子【人魚が逃げた】

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青山美智子/著 
出版社名 PHP研究所
出版年月 2024年11月
ISBNコード 978-4-569-85794-7
(4-569-85794-9)
税込価格 1,760円

ある3月の週末、SNS上で「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りした。どうやら「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい歩き、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語っているらしい。彼の不可解な言動に、人々はだんだん興味を持ち始め――。

 

著者は、4年連続で本屋大賞にノミネートされているとか。
過日の「鈴木保奈美 あの本読みました?」にも出席して、本書について語っておられた。

【木曜日にはココアを】でファンになり、その後何冊か読んできたが、「ココア」と【月の立つ林で】以外は、さほど感動しなかった。
短編集が多く、それぞれの登場人物が他の短編でも登場したり関係があったりという手法も、ちょっとありきたりに思えてくる。

さて本書だが、歩行者天国に突然現れた「王子」を軸に、それぞれ悩みを抱えた5人が葛藤する物語。
彼らにとって、「人魚」とは何だったのか?
案外身近なところに幸せが転がっている、と言いたかったのか?

最後の【君は確か】が好きだったかな。

関連記事

【月の立つ林で】(23.06.26)

【木曜日にはココアを】(19.12.16)

 

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2025.05.09

有栖川有栖の探偵たち

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有栖川有栖さんの小説には、語り手として「有栖川有栖」が登場する。

ところがこの有栖川有栖、通称アリスは二人いるのだ。

いわゆる「学生アリス」に登場する推理研の会長江神さんと、「作家アリス」でのホームズ准教授火村。

今年初めにアップした【砂男】は、単行本未収の短編集で、なんと江神さんと火村が2篇ずつ収録されている。
「読書メーター」でのこの本の感想には「江神先輩が好きなので嬉しかった。 」「学生アリスものはほのぼのしていて好き。 」「思いがけず江神シリーズを読めて嬉しい」といったものが多く、非常に嬉しかった。

 

関連記事

【砂男】(25.01.31)

 

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2025.05.08

西村京太郎【天草四郎の犯罪】

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中公文庫 に7-40
西村京太郎/著 
出版社名 中央公論新社
出版年月 2010年12月
ISBNコード 978-4-12-205406-6
(4-12-205406-0)
税込価格 586円

二人組の強盗犯の前に一人の男が現れ、杖一本で犯人を打ち伏せてしまう。天草四郎(てんぐさしろう)と名乗った男は、一月後にも四人組の宝石強盗を杖一本で撃退! この武勇伝により、彼は一躍国民的英雄となった。さらに凶悪犯退治は続き人気は沸騰するが、一切自分の身許を語らない天草四郎に、十津川の友人の新聞記者が疑惑の目を向ける。「正義の味方」の目的は? その正体に十津川が迫る!

 

傷害事件があったり詐欺案件があったりしたのだが、何だか犯罪はなかったような印象を受けた。

最後に十津川が受けた印象通りということか。

これも、その「てんぐさ」なる人物の容姿が好印象を与えていたことが大きいかもしれない。

とにかく、これまでの十津川ものとは一風変わった話で、結構おもしろかった。

 

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