長月天音【ほどなく、お別れです】
大学生の清水美空は、東京スカイツリーの近くにある葬儀場「坂東会館」でアルバイトをしている。
社長の板東は美空の父の友だちで、その関係でバイトを始めたのだったが。
事務方の陽子や、キリッとした社員の漆原などが登場。この漆原という人は若いらしいのだが、何だか達観した風情がある。
そして美空が漆原や僧侶の里見と出会うのは、いずれも訳ありの故人ばかり。
焼身自殺した息子を見送る老夫婦。
お腹の子もろとも、歩道橋から落ちて亡くなった妊婦。残された夫の哀しみ。
学齢前の幼女の死を、親、特に母親はなかなか受け入れられない。
指を噛み切って自殺した若い女性もいる。
そんな現場にいて、美空は葬儀とは亡くなった人のためというよりは、身内のための場だと悟る。
実は美空には「気」を感じる力があって、それは僧侶の里見も同じである。
漆原は感じることはできないが、この二人の感じ方から、もっとも相応しい接し方をしている。
また美空は、空になった食器を見るたびに、生きている人はどんな時でも食べなくてはいかないということを感じる。
美空自身、生まれる前に亡くなった姉がおり、時折姉の気配を感じている。
そして最愛の祖母も、その姉に付き添われて旅立っていった。
シリーズもののようだ。
葬儀場を経営している女性が主人公の本もよかったが、こちらはまた違った重みがあった。
最近のコメント